介護とは、高齢者や障害者など、日常生活に困難を抱える人々に対して、身体的・精神的・社会的な支援を行うことです。介護は、人間の尊厳や自立を尊重し、より良い生活の質を提供することを目的としています。しかし、介護の概念や制度は、時代や社会の変化に応じて変遷してきました。この記事では、介護の歴史と政策について、以下の3つのポイントに注目して解説していきます。
- 介護の歴史:介護の概念や法律・制度・社会の動きを時系列に沿って紹介します。
- 介護の政策:介護保険制度の仕組みや改正の流れ、現在の課題や展望について説明します。
- 介護の未来:高齢化社会における介護のニーズやトレンド、新しい技術やサービスについて紹介します。
介護の歴史|介護の概念や法律・制度・社会の動きの変遷
介護の歴史を振り返ると、戦後から現代までに、介護の概念や法律・制度・社会の動きが大きく変化してきたことが分かります。ここでは、主な出来事や動きを時代ごとにまとめてみました。
戦後~1960年代:老人福祉政策の始まり
- 戦後の貧困対策から、福祉制度の整備へ。介護は看護や介助の未分化
- 1946年:旧生活保護法成立。低所得者の収容保護
- 1947~49年:第1次ベビーブーム
- 1950年:新生活保護法
- 1951年:有料老人ホーム設置
- 1960年:軽費老人ホーム設置
- 1963年:老人福祉法。老人問題が認識され、介護明記
- 1964年:東京オリンピック。高度経済成長、平均寿命延伸、高齢化率の進展
1970年代~1980年代:社会構造の変化で介護ニーズが高まる
- 介護サービスの量的拡充。福祉専門職が国家資格化
- 1971~74年:第2次ベビーブーム
- 1973年:福祉元年、老人医療費無料化
- 1978年:ショートステイ創設
- 1979年:デイサービス創設
- 1982年:老人保健法
- 1985年:プラザ合意。超円高、バブル経済
- 1985年:年金制度改正、基礎年金制度導入
- 1986年:老人保健施設、現・介護老人保健施設創設
- 1987年:社会福祉士及び介護福祉士法成立
- 1989年:ゴールドプラン策定
1990年代~2000年代:介護保険制度の施行と改正
- 介護施策が広がり、介護福祉士の基本的な概念が整理される
- バブル崩壊、失われた20年
- 携帯、PC、インターネット普及
- 1990年:老人家庭奉仕員⇒ホームヘルパーへ
- 1992年:老人訪問看護制度創設
- 1994年:新ゴールドプラン策定
- 1994年:高齢社会に突入
- 1997年:介護保険法成立
- 1999年:ゴールドプラン21策定
- 2000年:社会福祉基礎構造改革:措置⇒契約へ
- 2000年:社会福祉法
- 2000年:介護保険制度施行。多様な介護サービスが整備され、介護福祉士の概念が更に拡大
- 2005年:高齢者虐待防止法成立
- 2007年:超高齢化社会へ突入
- 2007年:社会福祉士及び介護福祉士法改正:「三大介護」⇒「心身の状況に応じた介護へ」へ
- 2008年:後期高齢者医療制度創設
- 2011年:東日本大震災
- 2011年:社会福祉士及び介護福祉士法改正:医療的ケア、喀痰吸引が介護福祉士の業に含まれる
介護の政策|介護保険制度の仕組みと改正の流れ
介護の政策といえば、介護保険制度が最も重要なものです。介護保険制度は、2000年に制定された介護保険法によって定められている制度で、高齢者を社会全体で支え合っていく仕組みです。介護保険制度は、自立支援、利用者さま本位、社会保険方式という考え方を根底に持っています。ここでは、介護保険制度の仕組みや改正の流れについて解説していきます。
介護保険制度の仕組み
介護保険制度は、以下のような仕組みになっています。
- 対象者:40歳以上の全国民が加入。65歳以上の要支援・要介護者と、40歳以上の特定疾患者が利用できる。
- 負担者:国、都道府県、市町村、被保険者が負担。被保険者は、介護保険料と自己負担割合(10%または20%)を支払う。
- 給付者:市町村が給付。介護サービスの種類や量は、介護認定審査会が決定する。
- 提供者:介護サービス事業者が提供。介護サービスの質は、介護サービス報酬改定審議会が決定する。
介護保険制度は、介護サービスの利用者と提供者の間に契約を結ぶことで、利用者のニーズに応じたサービスを選択できるようにしています。また、介護サービスの種類や量は、介護認定審査会が介護度(要支援1~2、要介護1~5)に応じて決定します。介護度は、身体的・精神的な状態や日常生活の自立度などを総合的に評価したものです。
介護保険制度の改正の流れ
介護保険制度は、施行から20年以上が経過し、高齢化社会の変化に対応するために、何度も改正されてきました。ここでは、主な改正の内容と目的を時代ごとにまとめてみました。
- 2002年:介護保険制度の第1回改正。介護サービスの利用者負担割合を10%に引き上げ、介護保険料の負担者区分を見直すなど、財政の健全化を図る。
- 2006年:介護保険制度の第2回改正。介護サービスの利用者負担割合を所得に応じて10%または20%に変更し、介護サービスの質の向上や多様化を推進する。
- 2012年:介護保険制度の第3回改正。介護サービスの利用者負担割合を所得に応じて10%、15%、20%に変更し、介護予防や地域包括ケアの推進を図る。
- 2015年:介護保険制度の第4回改正。介護サービスの利用者負担割合を所得に応じて10%、20%、30%に変更し、介護人材の確保や待機者の解消を目指す。
- 2018年:介護保険制度の第5回改正。介護サービスの利用者負担割合を所得に応じて10%、20%、30%に据え置き、介護サービスの見直しや医療との連携を強化する。
- 2021年:介護保険制度の第6回改正。介護サービスの利用者負担割合を所得に応じて10%、20%、30%に据え置き、介護サービスの効率化やデジタル化を推進する。
まとめ
この記事では、介護の歴史と政策について、以下の3つのポイントに注目して解説しました。
- 介護の歴史:介護の概念や法律・制度・社会の動きを時系列に沿って紹介しました。戦後から現代までに、介護の概念や制度は大きく変化してきたことが分かります。
- 介護の政策:介護保険制度の仕組みや改正の流れを説明しました。介護保険制度は、高齢者を社会全体で支え合っていく仕組みで、自立支援、利用者さま本位、社会保険方式という考え方を根底に持っています。介護保険制度は、高齢化社会の変化に対応するために、何度も改正されてきました。
- 介護の未来:高齢化社会における介護のニーズやトレンド、新しい技術やサービスについて紹介しました。介護の未来は、介護人材の確保や待機者の解消、介護サービスの効率化やデジタル化など、様々な課題や展望があります。
介護は、人間の尊厳や自立を尊重し、より良い生活の質を提供することを目的としています。介護の歴史と政策を知ることで、介護の現状や未来について、より深く理解することができるでしょう。