狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれることで人間にも感染する恐ろしい病気です。一度発症するとほぼ100%死に至ると言われており、世界では毎年約6万人の死者を出しています。日本では1957年以降、人間やイヌ、ネコの狂犬病は発生していませんが、海外旅行やペットの輸入などで感染するリスクはゼロではありません。この記事では、狂犬病の原因や感染経路、症状、治療法、予防法などを詳しく解説します。狂犬病に関する正しい知識を身につけて、自分や家族、ペットの命を守りましょう。
狂犬病の原因は狂犬病ウイルス
狂犬病の原因は、ラブドウイルス科リッサウイルス属に属する狂犬病ウイルスです。このウイルスは、すべての哺乳類に感染する可能性がありますが、特にイヌやコウモリ、キツネ、アライグマなどの野生動物が主な感染源となっています。狂犬病ウイルスは、感染した動物の唾液に含まれており、咬傷や粘膜への接触によって人間にも感染します。感染したウイルスは、神経系を伝わって脳に到達し、脳炎や髄膜炎などの重篤な神経症状を引き起こします。
狂犬病の感染経路は主に咬傷
狂犬病の感染経路は、主に感染した動物に噛まれることです。咬傷の部位や深さによって、感染の確率や潜伏期間が異なりますが、一般には顔や首などの脳に近い部位ほど感染しやすく、発症も早くなります。咬傷から侵入したウイルスは、日に数mmから数十mmの速さで神経を逆行性に移動していきます。潜伏期間は、感染部位やウイルス量によって異なりますが、平均して1～3ヶ月程度と言われています。ただし、数週間で発症する場合や、数年かかる場合もあります。
咬傷以外にも、感染した動物の唾液が傷口や目・鼻・口などの粘膜に付着することで感染することもあります。また、コウモリが多く住む洞窟などでは、飛沫感染や空気感染の可能性も指摘されています。しかし、通常はヒトからヒトへの感染はありません。ただし、感染者の臓器や角膜を移植した場合や、感染者の血液に触れた場合などには、感染のリスクがあります。
狂犬病の症状は神経系に影響する
狂犬病の症状は、ウイルスが脳に到達した後に現れます。症状は大きく分けて、前駆期、急性期、昏睡期の3つの段階に分かれます。
- 前駆期：発熱、頭痛、吐き気、咬傷部位の痛みやかゆみなどの風邪に似た症状が現れます。この期間は2～10日程度続きます。
- 急性期：興奮や不安、攻撃性、幻覚などの精神症状が現れます。また、水や音や光などに対して過敏になり、嚥下筋や呼吸筋の痙攣を起こします。これが恐水症や恐風症と呼ばれる症状です。この期間は2～4日程度続きます。
- 昏睡期：全身の麻痺や昏睡が進行し、呼吸停止や心停止によって死亡します。この期間は数時間から数日程度です。
狂犬病の症状は、一度発症するとほとんど治ることはありません。ごく稀に生存例もありますが、重度の後遺症が残ることが多いです。また、症状が出る前には、ウイルス性脳炎やギラン・バレー症候群などの他の神経疾患との鑑別が困難になることもあります。
狂犬病の治療法はないが、予防法はある
狂犬病の治療法は、現在のところ確立されていません。狂犬病に感染したと疑われる場合は、速やかに医療機関に受診し、狂犬病ワクチンと免疫グロブリンの接種を受ける必要があります。これらは、感染後でも発症前に接種すれば、発症を防ぐ効果があります。しかし、発症してしまったら、これらの予防接種は効果がありません。発症した場合は、症状を緩和するための対症療法や人工呼吸器などの支持療法が行われますが、ほとんどの場合は死に至ります。狂犬病の予防法は、感染した動物に噛まれないことが最も重要です。特に海外旅行やペットの輸入などで、狂犬病の発生が多い地域に行く場合は、事前に狂犬病ワクチンの接種を受けることが推奨されます。また、ペットのイヌやネコにも定期的に狂犬病ワクチンを接種し、適切な管理を行うことが必要です。もし感染した動物に噛まれたり、唾液に触れたりした場合は、すぐに傷口を流水で洗い、消毒液や石鹸で清潔にすることが大切です。そして、速やかに医療機関に連絡し、狂犬病ワクチンと免疫グロブリンの接種を受けるようにしてください。
まとめ
狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれることで人間にも感染する恐ろしい病気です。一度発症するとほぼ100%死に至ると言われており、世界では毎年約6万人の死者を出しています。日本では1957年以降、人間やイヌ、ネコの狂犬病は発生していませんが、海外旅行やペットの輸入などで感染するリスクはゼロではありません。狂犬病の原因や感染経路、症状、治療法、予防法などを知って、自分や家族、ペットの命を守りましょう。
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