介護療養型医療施設とは、要介護度の高い人が入居できる公的な施設です。医療ケアやリハビリも充実していますが、2024年3月末に廃止される予定です。その受け皿として、新しく「介護医療院」が設けられました。この記事では、介護療養型医療施設の詳細と一緒に、廃止の背景や介護医療院についても詳しくご紹介していきます。
介護療養型医療施設とは
介護療養型医療施設は「療養病床」とも呼ばれており、寝たきり状態など要介護度の高い人の受け入れが中心の施設です。主に医療法人が運営しており、特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同じく公的な施設となります。
最大の特徴は、介護施設のなかでも医療体制が充実しているところです。人員配置の基準として、100床につき常勤医師3人、常勤看護職員と介護職員は各17人以上と定められています。介護職員だけではなく、医師や看護職員も常勤しているので胃ろうやたん吸引といった医療ケアを必要な人も安心して入居可能です。在宅復帰を目指す人に対しては、回復期のリハビリや医療・看護ケアも提供されます。
介護療養型医療施設の入居条件
入居対象者は、原則65歳以上で要介護1以上の認定を受けている高齢者です。ただし、特定の疾患により要介護認定を受けている場合は、64歳未満でも入居の相談に対応しています。また施設によっては、伝染病などの疾患がない、長期入院の必要性がないといった条件がある場合があるので、事前に確認してください。
入居の際に面談や審査があります。審査では主治医意見書・診断書から入居者本人の健康状態や介護度をチェックするので、申し込む際に用意してください。
介護療養型医療施設のメリット・デメリット
介護療養型医療施設は他の介護施設とは異なるメリットがあります。その一方で、デメリットに感じる部分もあります。では、メリットとデメリットの両方をご紹介します。
メリット
メリットには、次の3つが挙げられます。
- 万全な看護・医療体制で介護度が高い人も安心
- 容体の悪化に対応しやすい
- 看取りケア・終末期のケアに対応
介護療養型医療施設は、国の施設区分では「病院」と指定されています。医師の配置が多いため、万全な看護・医療体制が整い、寝たきりの人や認知症、糖尿病など常に医療ケアが必要な人も気兼ねなく入居できる点が大きなメリットです。さらに、施設内には薬剤師・栄養士・理学療法士・作業療法士、介護支援専門員など幅広い専門分野のスタッフがおり、入居者の生活を支えています。必要に応じて、個別の機能回復訓練も実施できるので、在宅復帰を目指すことも可能です。
医療法人が運営する施設となるので、一般病棟が併設されているケースも多いです。そのため、もしも容体が悪くなった時も、スムーズに一般病棟へ移れます。
厚生労働省の「2016年 介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、介護療養型医療施設の入居者の53.6%が要介護度5、33.9%が要介護度4です。入居者のうち多くが何らかの介護・医療処置が必要な方となっています。そのため、介護療養型医療施設では緊急時の対応や看取りケアに対応しています。終末期のケアもおこなってくれるので、家族としては安心して任せられるのがメリットです。
デメリット
介護療養型医療施設のデメリットは次の3つです。
- 多床室が基本
- レクリエーションや生活サービスは少なめ
- 終身利用できない可能性がある
個室を用意している施設もありますが、基本は多床室で、1つの部屋で複数の入居者と生活を共にします。仕切りなど最低限のプライバシーは保護されていますが、 自分のペースで生活するのは難しいかもしれません。また、他の入居者とのコミュニケーションも少ない場合があります。プライバシーを重視する人や、人との交流を求める人にとっては、不満に感じるかもしれません。
介護療養型医療施設は、医療ケアを重視しているので、レクリエーションや生活サービスは他の介護施設に比べて少なめです。例えば、食事は基本的に給食形式で、好き嫌いやアレルギーなどの対応はできません。また、散歩や買い物などの外出支援もほとんどありません。日常生活に彩りを求める人にとっては、物足りないかもしれません。
介護療養型医療施設は、2024年3月末に廃止される予定です。そのため、終身利用できるとは限りません。廃止後は、新たに設けられた「介護医療院」に移行することになりますが、その際には再度の審査が必要です。また、介護医療院は介護療養型医療施設とは異なる運営方針やサービス内容を持っているので、入居者や家族の希望と合わない場合もあります。その場合は、他の施設を探す必要があります。
介護療養型医療施設の費用
介護療養型医療施設の費用は、医療費と介護費の2つに分かれます。医療費は、医療保険の適用を受けることができます。自己負担額は、一般的な病院と同じく、原則として医療費の3割となります。ただし、高額療養費制度の適用や、低所得者の医療費助成などの制度を利用することで、自己負担額を減らすことができます。
介護費は、介護保険の適用を受けることができます。自己負担額は、介護保険料の納付状況や所得によって異なりますが、原則として介護費の1割となります。ただし、高額介護サービス費の限度額制度の適用や、低所得者の介護費助成などの制度を利用することで、自己負担額を減らすことができます。
介護療養型医療施設の費用の例を以下に示します。この例では、要介護度5の入居者が、医療費と介護費の自己負担額がそれぞれ3割と1割の場合を想定しています。また、食費や水道光熱費などの生活費は別途必要です。
項目 | 金額 |
---|---|
医療費(自己負担額) | 約30,000円 |
介護費(自己負担額) | 約30,000円 |
合計 | 約60,000円 |
介護療養型医療施設の費用は、施設によって異なるので、入居前に必ず確認してください。また、費用の負担が困難な場合は、公的な支援制度を利用することができます。例えば、介護保険の給付上限額を超えた場合は、介護保険の特例給付を受けることができます。また、生活保護の対象となる場合は、生活保護の給付を受けることができます。詳しくは、施設や市区町村の窓口に相談してください。
介護療養型医療施設の廃止と介護医療院の概要
介護療養型医療施設は、2024年3月末に廃止される予定です。その理由は、介護療養型医療施設が医療保険の適用を受けていることにあります。医療保険は、病気の治療や回復を目的としたものであり、介護療養型医療施設の入居者の多くは、病気の治療や回復ではなく、安定した生活を送ることを目的としています。そのため、医療保険の適用を受けることは、医療保険の本来の趣旨に反するという指摘がありました。また、医療保険の適用を受けることで、医療費の増加にもつながっていました。
そこで、介護療養型医療施設の廃止に伴い、新たに「介護医療院」という施設が設けられました。介護医療院は、介護保険の適用を受ける施設であり、医療保険の適用は受けません。介護医療院の目的は、介護療養型医療施設と同じく、要介護度の高い人の生活を支えることです。しかし、介護医療院は介護療養型医療施設とは異なる運営方針やサービス内容を持っています。具体的には、以下のような特徴があります。
- 医療ケアは必要最低限にとどめる
- 在宅復帰を目指す人には積極的に支援する
- レクリエーションや生活サービスを充実させる
介護医療院は、医療保険の適用を受けないので、医療ケアは必 要なものにとどめます。例えば、胃ろうやたん吸引などの医療処置は行いますが、点滴や酸素吸入などの医療処置は行いません。医療ケアを必要最低限にとどめることで、入居者の自立性や尊厳を保つことを目指しています。また、医療費の抑制にもつながります。
介護医療院は、在宅復帰を目指す人には積極的に支援します。介護医療院には、在宅復帰支援チームという専門のチームがあります。このチームは、医師・看護師・介護士・理学療法士・作業療法士・ケアマネージャーなどから構成されており、入居者の在宅復帰に向けて個別のプランを立てて実施します。在宅復帰支援チームは、入居者だけでなく、家族や地域の関係者とも連携して、在宅復帰に必要な準備やフォローアップを行います。
介護医療院は、レクリエーションや生活サービスを充実させます。介護医療院には、レクリエーション担当者という専門のスタッフがいます。このスタッフは、入居者の趣味や嗜好に合わせて、様々なレクリエーションを企画・実施します。例えば、音楽や絵画、手芸などの趣味活動や、運動会やビンゴ大会などのイベントなどです。レクリエーション担当者は、入居者の心身の健康や社会性を高めることを目的としています。また、介護医療院では、食事や外出などの生活サービスも充実させます。例えば、食事は個別のメニューを提供したり、外出は買い物や散歩などの支援を行ったりします。生活サービスは、入居者の生活の質を向上させることを目的としています。
まとめ
介護療養型医療施設とは、要介護度の高い人が入居できる公的な施設です。医療ケアやリハビリも充実していますが、2024年3月末に廃止される予定です。その受け皿として、新しく「介護医療院」が設けられました。介護医療院は、医療ケアは必要最低限にとどめ、在宅復帰やレクリエーションなどを重視する施設です。介護療養型医療施設と介護医療院は、それぞれ異なる特徴や費用を持っています。自分や家族の状況に合わせて、適切な施設を選ぶことが大切です。