イギリスの介護制度
イギリスには、一般の市民向けの公的介護保険制度は存在しません。高齢者・障がい者・体に特定の疾患がある者・低所得者の医療保険のみが存在しています。この医療保険は、国民保健サービス（NHS）と呼ばれ、税金で賄われています。NHSは、医療費のほとんどを無料で提供していますが、介護費は自己負担となっています。ただし、低所得者や重度の介護が必要な者には、一部または全額が補助されます。
民間の介護保険にそれぞれ入るか、高額な費用が支払えない場合は、家庭内で介護をするような形を採ります。そのため多くのアメリカの高齢者は在宅での介護が必要となり、家族の介護負担が大きな社会問題になっています。現在は「ベビーブーマーズ」と呼ばれる第二次大戦後に出生率が高かった世代が介護を必要とする年齢に達し、さらに深刻な問題になっています。
イギリスでは、介護のための長期的な休暇の権利はありません。しかし、介護のための短期的な休暇や柔軟な勤務時間の調整など、仕事と介護の両立を支援する制度があります。また、介護者に対しては、介護者手当や介護者クレジットなどの給付や税制優遇などが行われています。
イギリスの介護施設
イギリスでは、要介護となった場合は介護施設を利用するのが一般的ですが、在宅ケアも人々の認識が見直され少しずつ増加している状況です。介護施設は厳しく法律で管理されており、利用者が安全で快適な生活を送ることができる制度が整っています。介護施設には資格が必要で、住み込みの被介護者のための施設は「イギリス介護協会」のメンバーである必要があります。
イギリスの介護施設には、以下のような種類があります。
- レジデンシャルホーム：介護や看護が必要な高齢者が入居する施設で、食事や清掃などの日常生活のサポートを受けることができます。医療的なケアは基本的には提供されません。
- ナーシングホーム：介護や看護が必要な高齢者が入居する施設で、レジデンシャルホームと同様に日常生活のサポートを受けることができますが、看護師や医師などの医療的なケアも提供されます。
- デイケア：在宅での介護を受けている高齢者が、日中に施設に通って、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けることができます。在宅介護者の負担軽減や高齢者の社会参加を目的としています。
イギリスの介護施設の利用料金は、利用者の所得や資産に応じて決められます。一定の基準以下の場合は、自治体が全額または一部を補助しますが、それ以上の場合は、自己負担となります。自己負担の場合は、月額で数十万円から数百万円にもなることがあります。
イギリスの介護職員
イギリスの介護職員は、介護施設や在宅ケアなどで高齢者に対して介護や看護などのサービスを提供する人のことです。介護職員には、介護助手や介護福祉士、看護師や准看護師などがあります。介護職員は、国家資格や民間資格を取得することが必要です。また、定期的な研修や更新も義務付けられています。
イギリスの介護職員は、低賃金や長時間労働、過重な業務などに苦しんでいます。また、介護職員の不足や高い離職率も問題となっています。イギリス政府は、介護職員の待遇改善や人材確保のために、賃金の引き上げや教育の充実などの施策を行っています。
イギリスと日本の介護の比較
イギリスと日本の介護の比較を、以下の表にまとめてみました。表は、各国の高齢者人口や介護制度、介護施設、介護職員などのデータを示しています。データは、2023年のものです。
| 項目 | イギリス | 日本 |
|---|---|---|
| 高齢者人口（65歳以上） | 1,86億人（全人口の18.4%） | 3,63億人（全人口の28.7%） |
| 介護制度 | 公的介護保険制度はなく、医療保険のみ。介護費は自己負担が多く、低所得者や重度の介護が必要な者には補助あり。 | 公的介護保険制度があり、介護費は保険料と自己負担で賄われる。介護の必要度に応じてサービスが提供される。 |
| 介護施設 | レジデンシャルホームやナーシングホームなどがあり、利用料金は高額。法律で厳しく管理されている。 | 特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがあり、利用料金は介護保険と自己負担で賄われる。法律で厳しく管理されている。 |
| 介護職員 | 介護助手や介護福祉士、看護師や准看護師などがあり、資格が必要。低賃金や長時間労働、過重な業務などに苦しんでいる。 | 介護福祉士や介護職員初任者研修などがあり、資格が必要。低賃金や長時間労働、過重な業務などに苦しんでいる。 |
まとめ
イギリスの介護事情は、日本と比べて、公的な支援が少なく、自己負担が多いことがわかりました。また、介護施設の利用が一般的で、在宅ケアはまだ発展途上であることもわかりました。さらに、介護職員の待遇や人材不足も、日本と同様に深刻な問題であることもわかりました。
イギリスの介護事情を知ることで、日本の介護の現状や課題について、新たな視点を得ることができると思います。イギリスと日本は、高齢化が進む中で、介護の質や量を向上させるために、どのような取り組みを行っていくべきでしょうか？それぞれの国の文化や歴史、社会や経済の背景を考慮しながら、今後の介護のあり方について、考えてみましょう。
参考文献：
