介護士は高齢者の生活を支える重要な仕事ですが、高齢者に対する偏見や差別が現場で起こることがあります。このような偏見や差別は「エイジズム」と呼ばれ、世界的に問題視されています。では、なぜ介護士に高齢者への偏見が生まれるのでしょうか？また、どうすれば偏見をなくし、高齢者を尊重することができるのでしょうか？この記事では、介護士の高齢者への偏見の原因と解消方法を考えていきます。
介護士の高齢者への偏見の原因
介護士の高齢者への偏見の原因は、以下のようなものが考えられます。
- 外集団に対して理解がないから
外集団とは、自分が属していない集団のことです。そのような外集団を、過度に単純化することで生じる「ステレオタイプ」が偏見を生んでしまいます。例えば、「高齢者はもうろくしている」「高齢者は何もできない」といったイメージです。このように知らないからこそ、「ステレオタイプ」な考え方で単純化し、ひいては偏見・差別につながるのです。
- 人は内集団以外を個別化しようとしないから
人は、自分と違う集団の人たちのことは、意識しない限り一括りにしてしまいます。例えば、「高齢者」と聞いて、皆さんは何を想像しますか？体が弱くて、要介護で、孤独で、と考えたりしないでしょうか？しかし実際には、人それぞれです。元気で活動的な人もいれば、趣味や学びに打ち込む人もいます。個性や価値観の多様性があります。このように、皆さんがあまり関わりのない集団の人たちのことは、個別化しないで一括りにしてしまうことで、偏見が生まれてしまいます。
- 自分を一般的と考えがちだから
人は、自分の意見や行動が一般的だ、と考えてしまうという特性があります。これを「フォールス・コンセンサス効果」といいます。例えば、自分が高齢者に対して優しく接することが普通だと思っていると、他の人も同じように優しく接するはずだと考えてしまいます。しかし、実際にはそうではない場合もあります。自分が偏見を持っているということに、なかなか気が付きにくいものなのです。
- 人は多数派に属したがるから
人は多数派に属したがるという心理があります。自分が優勢だと考えた考えについては声を挙げ賛同し、たとえ反対意見を持っていても、その考えが劣勢なら孤立を恐れて沈黙してしまうことがあります。また、同時に多くの人が考えていることに、人は同調してしまうものです。こうなると、どんどん一つの意見が正しいというものになっていきます。これは「沈黙の螺旋」とよばれる仮説です。偏見をなくすには、この螺旋をどこかで断つ必要がありますが、なかなか難しいものです。
- ネットを使うと、自然と自分の考えが強化されてしまうから
ネットを使うと、自然と自分の考えが強化されてしまうという現象があります。これは「エコーチェンバー現象」と呼ばれ、ある閉じた空間で、自分と同じ意見を持つ人が集まると、その意見を正しいと考える気持ちが強くなることを意味しています。ネットが普及して、いろいろな人と意見交換できるようになったから、そのようなことは起こらないのではと、考える人もいるかもしれません。しかし、SNSや検索を行ったとしても、どうしても自分と近しい意見を取り入れてしまいがちです。例えば、Twitter。フォロワーが似通った人なら、意見は近いものしか出てきません。同意見の人しか世の中にいない、と錯覚することにも繋がります。このようなエコーチェンバー現象の効果を受けてしまいやすい環境にいることで、偏見が強まってしまうということがあります。
介護士の高齢者への偏見の解消方法
では、どのようにすれば介護士の高齢者への偏見がなくなるのでしょうか？残念なことに、おそらく偏見が完ぺきに世界から無くなることはないでしょう。偏見、言い換えれば先入観があるからこそ、人間は行動することが出来るとも言えるからです。人とのコミュニケーションにおいても、完璧に理解した状態になることは不可能です。そこで、差別をしないために知っておきたいことをお伝えし、最後に介護士の高齢者への偏見を少しでも良いものにするために、私たちが出来ることをお伝えします。
- 「偏見・先入観」と「事実」の違いを意識する
まずは、自分たちが持っている偏見や先入観と、事実との違いを意識することが大切です。自分が高齢者に対して持っているイメージは、本当にその人の特徴や性格を反映しているのでしょうか？それとも、自分の経験やメディアの影響などによって作られたものなのでしょうか？自分の考えが事実に基づいているかどうか、常に確認することが必要です。
- 高齢者とのコミュニケーションを増やす
高齢者とのコミュニケーションを増やすことで、高齢者の個性や価値観を知ることができます。高齢者に対して、ただ介護するだけではなく、話を聞いたり、意見を交わしたり、共感したりすることで、高齢者との関係性を深めることができます。高齢者とのコミュニケーションを増やすことで、高齢者に対する偏見や差別を減らすことができます。
- 高齢者の尊厳を尊重する
高齢者の尊厳を尊重することは、介護士の基本的な姿勢です。高齢者に対して、自分の意思や選択を尊重し、自立を支援することで、高齢者の尊厳を守ることができます。高齢者に対して、子供扱いしたり、命令したり、無視したりすることは、高齢者の尊厳を傷つけることになります。高齢者の尊厳を尊重することで、高齢者に対する偏見や差別を防ぐことができます。
- 自分の偏見や差別に気づいたら、改善する
自分の偏見や差別に気づいたら、それを改善することが重要です。自分の偏見や差別に気づいたら、それを素直に認め、反省し、謝罪することが必要です。また、自分の偏見や差別の原因を探り、それを解消するために、学習したり、相談したり、行動したりすることが必要です。自分の偏見や差別に気づいたら、改善することで、高齢者に対する偏見や差別を減らすことができます。
まとめ
この記事では、介護士の高齢者への偏見の原因と解消方法を考えてみました。介護士の高齢者への偏見は、様々な要因によって生まれ、高齢者の生活の質や人権を損なうことがあります。介護士は、自分の偏見や差別に気づき、それを改善することで、高齢者に対する偏見や差別をなくすことができます。高齢者に対する偏見や差別をなくすことは、介護士だけでなく、社会全体の課題です。高齢者を尊重し、理解し、支えることで、より良い社会を作っていきましょう。
