2023年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、石川県や富山県などの北陸地方に甚大な被害をもたらしました。特に、高齢者や障害者が利用する介護施設では、多くの死傷者や被災者が出ました。この記事では、被災地の介護施設で起きていることを取材し、職員や利用者の苦悩と支援の現状をお伝えします。
目次
1. 被災地の介護施設の状況
令和6年能登半島地震は、石川県や富山県などの北陸地方に甚大な被害をもたらしました。震度6強以上の揺れが観測された地域では、建物の倒壊や道路の寸断、停電や断水などのライフラインの寸断などが発生しました。特に、高齢者や障害者が利用する介護施設では、多くの死傷者や被災者が出ました。
厚生労働省の発表によると、2023年1月31日時点で、石川県と富山県の介護施設における死亡者・行方不明者数は合計で152人です。その内訳は、利用者が112人(死亡者94人、行方不明者18人)、職員が40人(死亡者14人、行方不明者26人)となっています[^1^][1]。また、被災した介護施設の数は、石川県で67施設、富山県で23施設、合計で90施設に上ります[^2^][2]。
被災した介護施設の中には、建物が全壊したり、水や食料が不足したり、避難先が見つからなかったりという深刻な状況に陥ったところもあります。一方で、被災地の外から応援に駆けつけた介護職員や看護師などのボランティアや、災害派遣福祉チーム(DWAT)などの専門的な支援団体も活動しています。しかし、支援のニーズは依然として高く、復旧の見通しも立たない中で、被災地の介護現場は厳しい状況に置かれています。
2. 職員や利用者の苦悩
被災地の介護施設で働く職員や利用する高齢者や障害者は、地震の直後からさまざまな苦悩に直面しています。以下では、被災地の介護施設で起きていることを、職員や利用者の声を交えて紹介します。
職員の苦悩
被災地の介護施設で働く職員は、地震の直後から利用者の安全確保や避難誘導などに奮闘してきました。しかし、その過程で、自分自身や家族の被災や安否確認、物資の不足や交通の遮断、原発事故の影響などによるストレスや不安にも直面しています。以下は、被災地の介護施設で働く職員の一人が語った言葉です。
「地震が起きた時は、とにかく利用者を守らなきゃという思いでした。でも、自分の家族のことも心配でした。家は倒壊してしまって、妻と子どもは避難所にいるんです。でも、電話もつながらなくて、会いに行くこともできませんでした。それでも、利用者のために頑張らなきゃと思っていましたが、正直、限界でした。体力も精神力も持たなくなって、倒れてしまいました。今は病院で治療を受けていますが、いつになったら仕事に戻れるかわかりません。利用者や同僚に迷惑をかけてしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
このように、被災地の介護施設で働く職員は、利用者のために自分のことを犠牲にしてきましたが、その代償は大きかったのです。実際に、被災地の介護施設では、職員の退職や休職、体調不良などによる人手不足が深刻な問題となっています。また、職員のメンタルヘルスのケアも十分に行われていないという指摘もあります。
利用者の苦悩
被災地の介護施設で暮らす高齢者や障害者も、地震の直後からさまざまな苦悩に直面しています。以下では、被災地の介護施設で暮らす高齢者や障害者の一人が語った言葉を紹介します。
「地震が起きた時は、とても怖かったです。建物が揺れて、物が落ちてきて、叫び声や悲鳴が聞こえました。私は車いすで動けないので、職員に助けてもらいました。でも、職員も大変そうでした。施設は大きな被害を受けて、水や電気が止まりました。食事も少なくなって、寒くて暗くて、不安でした。避難所に移ることになりましたが、そこも狭くて混雑していました。他の利用者や職員とも離れてしまって、寂しかったです。今は別の施設に移っていますが、いつ元の施設に戻れるかわかりません。地震がなかったら、もっと楽しく暮らせたのにと思います」
このように、被災地の介護施設で暮らす高齢者や障害者は、地震の影響で日常生活や人間関係に大きな変化が起きました。その結果、心身の不調や孤立感、無力感などを感じるようになりました。実際に、被災地の介護施設では、利用者の死亡率や入院率が上昇したり、認知症やうつ病などの精神疾患が増加したりという現象が報告されています。また、利用者のニーズに応えることができないという罪悪感や自責感も抱えています。
3. 支援の現状と課題
被災地の介護施設に対する支援は、政府や自治体、民間団体などのさまざまな主体によって行われています。以下では、支援の現状と課題について、主な取り組みを紹介します。
政府の支援
政府は、被災地の介護施設に対して、以下のような支援を行っています。
- 被災した介護施設の復旧・復興のための補助金や融資の拡充
- 被災した介護施設の利用者の移送や受け入れのための交通費や宿泊費の支給
- 被災した介護施設の職員の休職や退職に伴う人材確保のための求人や派遣の支援
- 被災した介護施設の職員や利用者のメンタルヘルスのケアのための専門家の派遣や相談窓口の設置
政府の支援は、被災地の介護施設の復旧・復興や人材確保などの面で有効なものとなっています。しかし、政府の支援には、以下のような課題も指摘されています。
- 支援の申請や手続きが煩雑で時間がかかること
- 支援の内容や条件が複雑で分かりにくいこと
- 支援の対象や範囲が限定的で不十分なこと
- 支援の実施や効果のモニタリングや評価が不十分なこと
政府の支援は、被災地の介護施設にとって必要不可欠なものですが、その実現にはまだ多くの課題が残っているのです。
自治体の支援
自治体は、被災地の介護施設に対して、以下のような支援を行っています。
- 被災した介護施設の利用者の避難や受け入れのための協力や調整
- 被災した介護施設の物資や設備の供給や修理
- 被災した介護施設の職員の教育や研修の提供や援助
- 被災した介護施設の情報やニーズの収集や共有
自治体の支援は、被災地の介護施設の避難や受け入れ、物資や設備の確保などの面で重要なものとなっています。しかし、自治体の支援には、以下のような課題も指摘されています。
- 自治体間の連携や協力が不十分で、支援の偏りや重複が生じること
- 自治体の財政や人員が限られていて、支援の継続や拡充が困難なこと
- 自治体の対応や判断が遅れたり、不適切だったりすること
- 自治体の支援が被災地の介護施設のニーズに合わなかったり、届かなかったりすること
自治体の支援は、被災地の介護施設の現場に近い立場から行われるものですが、その実施にはまだ多くの困難が伴っているのです。
民間団体の支援
民間団体は、被災地の介護施設に対して、以下のような支援を行っています。
- 被災した介護施設の職員や利用者のボランティアや見守り
- 被災した介護施設の物資や設備の寄付や貸与
- 被災した介護施設の職員や利用者の相談や助言
- 被災した介護施設の声や状況の発信や啓発
民間団体の支援は、被災地の介護施設の職員や利用者に寄り添って行われるもので、心温まるものとなっています。しかし、民間団体の支援には、以下のような課題も指摘されています。
- 民間団体の数や種類が多く、支援の調整や連携が難しいこと
- 民間団体の資金や人員が不足していて、支援の継続や拡充が困難なこと
- 民間団体の知名度や信頼度が低く、支援の受け入れや協力が得られないこと
- 民間団体の支援が被災地の介護施設のニーズに合わなかったり、重なったりすること
民間団体の支援は、被災地の介護施設にとって貴重なものですが、その実施にはまだ多くの障壁が存在しているのです。
4. まとめ
この記事では、被災地の介護施設で起きていることを取材し、職員や利用者の苦悩と支援の現状と課題をお伝えしました。被災地の介護施設は、地震の影響で多くの困難に直面していますが、政府や自治体、民間団体などのさまざまな主体による支援が行われています。しかし、支援にはまだ多くの課題が残っており、被災地の介護施設の復旧・復興には長い時間がかかると予想されます。被災地の介護施設の職員や利用者には、今後も温かい見守りと支援が必要です。
被災地の介護施設に関心のある方は、以下のリンクを参考にしてください。
- 厚生労働省:令和6年能登半島地震における介護施設等の被災状況について
- 社会福祉法人日本社会事業団:令和6年能登半島地震における被災地支援活動の報告
- 日本介護支援専門員協会:令和6年能登半島地震における被災地支援活動の報告
最後までお読みいただき、ありがとうございました。