介護業界は、高齢化社会の中で需要が高まる一方で、人材不足や経営難に悩む厳しい状況にあります。2022年には介護事業所の倒産件数が過去最多を記録し、2023年も増加傾向にあります。介護業界の経営難の原因としては、新型コロナウイルスの影響、物価高による経営コストの増加、人員不足などが挙げられます。この記事では、介護業界の経営難の現状と背景、そして経営難を克服するための対策についてわかりやすく解説します。
介護業界の経営難の現状と背景
倒産が相次ぐ介護事業所
介護事業所の倒産件数は2022年に過去最多を記録し、143件で前年比76.5％増になりました[^1^][1]。さらに2023年の12月15日までの統計で、訪問介護事業所の倒産は60件を記録し、過去最多になりました[^2^][2]。将来的に日本の介護ニーズは高まり続けることが予測されている現状、介護事業所の経営難は大きな問題です。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、感染予防対策のための経費や光熱費の増加、施設の利用控えによる収益減などが影響して事業所の経費を圧迫しました。行政は2021年に補助金等支援策を実施しましたが、その効果が切れたタイミングで倒産が増加したと見られています[^3^][3]。
物価高による経営コストの増加
海外の情勢や円安などの影響による物価高、原油の価格上昇により、経営コストが増加しました。他業界の企業なら経営コストが増えた場合、サービス料金を上げるなどの対策が取れますが、介護報酬は厚生労働省が定める介護保険制度によりサービスの種類ごとに定められており、コスト増を報酬で賄うことができず経営難に苦しむ事業所が増えています[^4^][4]。
人員不足による経営難の増加
介護職員の人員不足による経営難も増えています。2023年12月15日までの訪問介護事業者の倒産では人手不足倒産が10件となり、年間最多を記録しました[^2^][2]。2022年のヘルパーの有効求人倍率は15.5倍に達している上に、現役のヘルパーの4人に1人（24.4％）が65歳以上という「ヘルパーの高齢化」も進んでいます[^5^][5]。
介護業界の経営難を克服するための対策
介護職員の待遇改善
介護職員の人材不足は、給与や待遇の低さ、社会的評価の低さ、過酷な労働環境などが原因とされています。介護職員の処遇改善は、人材確保や離職防止、モチベーション向上などに繋がります。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 業界全体での給与水準の向上や、資格やスキルに応じた報酬体系の導入
- 福利厚生やキャリアアップの支援、メンタルヘルスのケアなどの働きやすい環境の整備
- 介護職の重要性や専門性を広く社会に発信し、社会的な評価や認知度の向上
ICTの活用
ICT（情報通信技術）の活用は、介護業務の効率化や品質向上、コスト削減などに貢献します。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- タブレットやスマートフォンなどのデバイスを用いた業務管理や記録作成、報告などのペーパーレス化
- AIやロボットなどの技術を用いた介護サービスの提供や介護職員の負担軽減
- オンラインやクラウドなどのツールを用いた遠隔介護や在宅介護の支援や連携
事業の多角化や差別化
事業の多角化や差別化は、競合他社との差別化や収益源の拡大に繋がります。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 介護以外の事業領域への進出や、介護事業の多様化や特化
- ニッチな市場やニーズに対応したサービスの開発や提供
- 自社の強みや特徴を明確にし、ブランディングやマーケティングを強化
まとめ
介護業界は超高齢化社会の中で重要な役割を担っていますが、経営難に直面しています。経営難の原因としては、新型コロナウイルスの影響、物価高による経営コストの増加、人員不足などが挙げられます。経営難を克服するためには、介護職員の待遇改善、ICTの活用、事業の多角化や差別化などの対策が必要です。介護業界は、経営の安定化とサービスの質の向上を目指して、これらの課題に取り組んでいく必要があります。
