高齢者の孤独死は年々増加し、社会問題となっています。孤独死とは、誰にも気付かれることなく1人で亡くなり、長期間発見されない状態を指します。高齢者の孤独死の原因には、未婚や1人暮らしによる孤独、経済的な困窮、隣人や地域住民との交流がほとんどないこと、持病や健康管理が影響していることなどが挙げられます。この記事では、高齢者の孤独死の現状と原因、そして未然に防ぐための対策について詳しく解説します。
高齢者の孤独死の現状
国土交通省の調査によると、2003年時点では65歳以上の高齢者による孤独死は1,441件でしたが、2018年には3,867人と15年でおよそ2.7倍増加していることがわかりました。また、孤独死の死因は半数以上が病死であり、次いで自殺、事故死となっています。孤独死の男女比は男性が圧倒的に多く、特に中高年の男性は社会とのつながりを失いやすいとされています。
高齢者の孤独死の原因
高齢者の孤独死を招く原因の一つは、未婚者の増加です。50歳時の未婚割合(45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均)の推移を見ると、1970年は男性1.7%、女性3.3%でしたが、2015年には男性23.4%、女性14.1%とそれぞれ上昇しています。それと連動するように単身世帯も増え続け、特に高齢者層の単身世帯、いわゆる独居老人の割合は上昇しています。
しかし、単身世帯であっても家族や地域社会とのつながりがあれば、孤立を避けられるのではないかと考えられます。なぜ、高齢者の単身世帯は孤立してしまうのでしょうか。内閣府は「高齢社会白書(2010年版)」で、高齢者の社会的孤立の背景として以下の項目を挙げています。
- 雇用労働者化の進行
- 生活の利便性の向上
- 暮らし向きと社会経済的境遇
雇用労働者化の進行とは、企業に雇用されて働く労働者は職住が分離し、農業や自営業と比べて地域との結びつきが浅くなることです。また、生活の利便性の向上では、インターネットなどを利用することで、家族や地域の人たちと交流しなくても衣食住について困らなくなったことが挙げられます。さらに、男性の1人暮らしでは「困った時に頼れる人がいない」と答えた人が24.4%であり、特に単身男性の社会参加の希薄さが見て取れます。
周りとの交流は健康状態が悪化したり、経済的に困窮したりした時こそ必要です。しかし、1人暮らしや健康状態が良くない高齢者や、未婚や離別した高齢者は、家族や近隣とのコミュニケーションが激減し、他者に頼ることができず、孤独死を迎えるリスクが高いと考えられます。
高齢者の孤独死を未然に防ぐ対策
孤独死を防ぐには、家族と共に暮らすことが一番の予防策です。しかし、家庭の事情により一人暮らしを余儀なくする方は少なくありません。そこで、高齢者の孤独死を未然に防ぐための対策を紹介します。
- 家族がこまめな連絡を心がける
- 自治体の高齢者支援サービスを利用する
- 見守りサービスを利用する
- 介護施設への入居を検討する
家族がこまめな連絡を心がけることで、体調不良や異変にいち早く気付けます。近年では、スマートフォンを使いこなしている高齢者が多い傾向にあるので、LINEなどのツールを利用してメッセージを送り合うのがおすすめです。
自治体の高齢者支援サービスを利用することで、職員やボランティアなどが定期的に安否確認や見守りを行ってくれます。また、配食やデイサービスなどの高齢者支援サービスを活用することで、食事や生活のサポートを受けるとともに、地域の人たちとの交流の機会を増やすことができます。
見守りサービスを利用することで、緊急時に素早く対応できます。見守りサービスには、電話やメールでの安否確認や、センサーやカメラでの居室の状況の監視などがあります。また、 GPSや緊急通報ボタンを備えた見守り端末を身につけることで、外出先でのトラブルにも対応できます。見守りサービスは有料のものが多いですが、自治体や社会福祉協議会などが無料や低額で提供している場合もあります。
介護施設への入居を検討することで、孤独死のリスクを大幅に減らすことができます。介護施設では、専門のスタッフが24時間体制で見守りや介護を行ってくれます。また、同じ施設に住む他の高齢者との交流や、レクリエーションなどの活動に参加することで、生きがいや楽しみを見つけることができます。介護施設には、要介護度に応じて特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがあります。介護施設への入居には、介護保険の適用や入居条件などの手続きが必要です。
まとめ
高齢者の孤独死は、未婚や1人暮らしによる孤独、経済的な困窮、隣人や地域住民との交流がほとんどないこと、持病や健康管理が影響していることなどが原因で起こります。孤独死を防ぐためには、家族と共に暮らすことが一番ですが、それができない場合は、家族がこまめな連絡を心がける、自治体の高齢者支援サービスを利用する、見守りサービスを利用する、介護施設への入居を検討するなどの対策が有効です。高齢者の孤独死は、社会全体で見守りや支援を行うことで防ぐことができます。高齢者の方々が安心して暮らせる社会を目指しましょう。