介護業界の人材不足は、少子高齢化が進む日本の社会問題の一つです。2024年の介護保険制度改正や2025年問題によって、人手不足はさらに深刻化すると予想されます。この記事では、介護業界の人材不足の現状と原因、解決策や事例を紹介します。
介護業界の人材不足の現状と原因
介護業界の人材不足は、高齢者の増加と生産年齢人口の減少、職場の人間関係や収入などの離職理由によって引き起こされています。以下のデータを見てみましょう。
- 2022年10月1日時点の人口ピラミッドは、上下が細く中程にボリュームのあるつぼ型で、少子高齢化が進行していることを示しています[^1^][1]。
- 人口に占める65歳以上の高齢者の割合である高齢化率は、2022年10月1日時点で29.0％で、年々高くなっています[^2^][2]。
- 16歳～64歳の生産年齢人口は、1995年に8,716万人でピークを迎えてから減少中で、今後はますます少なくなっていくでしょう[^2^][2]。
- 介護労働者の離職理由の上位は、「職場の人間関係に問題があったため」（27.5％）、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」（22.8％）、「他に良い仕事・職場があったため」（19.0％）、「収入が少なかったため」（18.6％）、「自分の将来の見込みが立たなかったため」（15.0％）です[^3^][3]。
- 業界ごとの正社員の従業員の過不足感は、医療・福祉が産業全体での値を大幅に超えた63という値で、最も正社員労働者の不足感が強い業界です。
- 介護事業所の人手不足感は、事業所全体で66.3％で、過去5年間で60％代で推移しており、高い水準が続いています[^3^][3]。
介護業界の人手不足を解消するには？
介護業界の人手不足を解消するには、様々な対策が必要です。以下に、主な対策と事例を紹介します。
給与や福利厚生の改善
介護業界の給与は、他の業界と比べて低い傾向にあります。2020年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、介護福祉士の平均月給は25.6万円で、全産業の平均月給（30.8万円）よりも約5万円低いです。
給与や福利厚生の改善は、介護職員の離職率を下げる効果があります。例えば、チケットレストランは、飲食店で使える食事券を介護職員に提供することで、食事の負担を軽減し、モチベーションを高める福利厚生です。チケットレストランを導入した介護事業所では、離職率が約10％減少したという事例があります。
ITツールや介護ロボットの活用
ITツールや介護ロボットの活用は、介護業務の効率化や負担軽減につながります。例えば、スマートフォンやタブレットを使って、利用者の情報や業務の記録を管理することで、紙ベースの書類作成や入力作業を削減できます。
また、介護ロボットは、利用者の移動や体位変換などの介助を行うことで、介護職員の負担を軽減できます。介護ロボットの市場規模は、2020年には約1,000億円でしたが、2025年には約2,500億円になると予測されています。
人材の育成と定着
人材の育成と定着は、介護業界の人材不足を解消するための長期的な対策です。例えば、介護職員のキャリアアップを支援することで、スキルやモチベーションを高めることができます。
また、職場の人間関係やコミュニケーションを改善することで、離職率を下げることができます。職場の雰囲気やチームワークを良くするために、定期的なミーティングや交流会、フィードバックや相談の機会を設けることが有効です。
2024年の介護保険制度改正と2025年問題の影響
2024年の介護保険制度改正や2025年問題によって、介護業界の人手不足はさらに深刻化すると予想されます。以下に、その影響について説明します。
2024年の介護保険制度改正
2024年の介護保険制度改正では、人員配置基準の見直しが検討されています。人員配置基準とは、介護施設において「適切な介護・医療」を提供するために、一定数以上の専門資格を有した人材の配置 (医師・介護士・看護師など)を義務付けた制度です[^1^][1]。必要な人数は介護施設の種類によって異なりますが、どの施設でも適切な介護サービスを提供するために、法律によって人員配置基準が定められています。人員配置基準に違反した場合、指定の取り消し・効力停止の処分が下される可能性もあります[^2^][2]。
2025年問題
2025年問題とは、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで、高齢者の数や介護需要が急増することを指します。2025年には、高齢者の割合が33.4％に達し、約2,000万人の後期高齢者がいると予測されています[^3^][4]。
2025年問題によって、介護業界の人手不足はさらに深刻化すると考えられます。厚生労働省の推計によると、2025年には介護職員の必要数が約220万人になるとされていますが、現在の介護職員の数は約170万人で、約50万人の不足が見込まれています[^4^][5]。
まとめ
この記事では、介護業界の人材不足の現状と原因、解決策や事例、2024年の介護保険制度改正や2025年問題の影響について紹介しました。介護業界の人材不足は、少子高齢化が進む日本の社会問題の一つです。給与や福利厚生の改善、ITツールや介護ロボットの活用、人材の育成と定着など、様々な対策が必要です。また、人員配置基準を守ることも、適切な介護サービスを提供するために重要です。介護業界の人材不足を解消するためには、政府や事業者、職員、利用者など、関係者全体で協力して取り組む必要があります。
