介護事故とは、介護サービスの提供中に発生した事故全般を指す言葉です。介護事故には、転倒や転落、誤嚥や誤薬、離設や徘徊など、さまざまな種類があります。介護事故は、利用者や家族だけでなく、介護職員や事業者にとっても大きな負担となります。
この記事では、介護事故の事故発生の実態や原因、発生時の対応方法、事故を防止するためのリスクマネジメントについて解説します。介護事故に関心のある方や、介護事故を防ぐために知っておきたい方は、ぜひお読みください。
介護事故の事故発生の実態とは？
介護事故の事故発生の実態については、統計的なデータが不十分なのが現状です。しかし、厚生労働省が2019年に行った調査によると、介護保険施設で発生した事故の件数は、2018年度には約3万件に上っています。そのうち、重大事故とされる死亡や重傷に至った事故は、約1,500件にのぼります。また、事故の種類別にみると、転倒や転落が最も多く、約6割を占めています。次いで、誤嚥や誤薬、離設や徘徊などが多くみられます。
介護事故の発生件数は、年々増加傾向にあります。これは、介護サービスの利用者数や高齢化の進行、介護職員の不足や離職率の高さなど、さまざまな要因が影響していると考えられます。介護事故は、利用者の生命や健康に重大な影響を及ぼすだけでなく、介護職員の負担やストレス、事業者の信用や経営にも悪影響を与えます。そのため、介護事故の発生を防ぐことは、介護の質の向上や安心・安全の確保にとって、極めて重要な課題です。
介護事故の原因とは？
介護事故の原因には、内的要因と外的要因の2つがあります。内的要因とは、利用者の身体的・精神的な状態や特性に関する要因です。例えば、加齢による筋力や視力、バランス感覚の低下、認知症やうつ病などの病気や障害、食事や服薬の管理などが挙げられます。外的要因とは、介護サービスの提供環境や介護職員の行動に関する要因です。例えば、施設の設備や器具の不備、介護技術や知識の不足、人員配置や業務の流れの問題、コミュニケーションや連携の不備などが挙げられます。
介護事故の原因を分析することは、事故の予防や再発防止にとって有効です。事故の原因を明らかにすることで、事故の発生リスクを低減するための対策を立てることができます。また、事故の原因を共有することで、職員間の意識やスキルの向上にもつながります。事故の原因分析には、5W1Hや魚の骨図などの手法がよく用いられます。
介護事故発生時の対応方法とは？
介護事故が発生した場合、適切な対応を行うことが求められます。介護事故発生時の対応方法には、以下の3つのステップがあります。
- 利用者の保護・応急処置
- 関係者への連絡・報告
- 事故の記録・報告書の作成
まず、利用者の保護・応急処置を行います。事故の状況を把握し、利用者の傷害の程度を判断し、救急車の手配等を行います。また、必要に応じて止血、人工呼吸、AEDの使用、心臓マッサージなどを行います。利用者の安全と安心を最優先に考え、冷静に対応します。
次に、関係者への連絡・報告を行います。事故の発生を関係職員や管理者・責任者に速やかに連絡し、適切な指示を仰ぎます。また、重大な事故の場合は、関係機関にも連絡・報告を行います。さらに、利用者の家族や代理人にも事故の内容や対応状況を説明し、謝罪や誠意ある対応を行います。
最後に、「利用者の状態」、「家族への連絡」、「事故後カンファレンスの実施」、「その他」を記載します。
利用者の状態には、事故発生後の利用者の身体的・精神的な変化や回復状況などを記載します。家族への連絡には、事故の内容や対応状況をいつ、誰が、どのように連絡したかを記載します。事故後カンファレンスの実施には、事故の原因分析や再発防止策の策定などをいつ、誰が、どのように行ったかを記載します。その他には、事故発生後に行った対応や関係者とのやりとりなど、重要なことがあれば記載します。
⑦事故の原因分析
事故の原因分析には、「事故の原因」、「事故の発生リスク」、「事故の発生要因」を記載します。
事故の原因には、事故が発生した直接的な原因を記載します。例えば、転倒事故の場合は、滑りやすい床や足元の障害物などが原因となります。誤薬事故の場合は、薬の管理や確認の不備などが原因となります。
事故の発生リスクには、事故が発生する可能性の高さを記載します。例えば、転倒事故の場合は、利用者の加齢や病気、介護技術の不足などがリスクとなります。誤薬事故の場合は、薬の種類や量の多さ、似たような容器やラベルの使用などがリスクとなります。
事故の発生要因には、事故が発生する背景や環境に関する要因を記載します。例えば、転倒事故の場合は、施設の設備や器具の不備、人員配置や業務の流れの問題、コミュニケーションや連携の不備などが要因となります。誤薬事故の場合は、薬の保管や管理の方法、服薬指示や確認の方法、服薬介助の方法などが要因となります。
事故の原因分析には、5W1Hや魚の骨図などの手法を用いると、より詳細に分析できます。5W1Hとは、When（いつ）、Who（誰が）、Where（どこで）、What（何を）、Why（なぜ）、How（どのようにして）の頭文字をとったもので、事故の状況を整理するのに役立ちます。魚の骨図とは、事故の原因を主要因と副要因に分けて、魚の骨のように図示するもので、事故の原因の関係性を視覚的に把握するのに役立ちます。
⑧再発防止策
再発防止策には、「対応策」、「実施時期」、「実施者」、「効果検証」を記載します。
対応策には、事故の原因分析に基づいて、事故を防止するために必要な具体的な対策を記載します。例えば、転倒事故の場合は、床や器具の滑り止めの設置、足元の障害物の除去、利用者の体力やバランス感覚の維持・向上のための運動プログラムの実施などが対策となります。誤薬事故の場合は、薬の保管や管理の方法の見直し、服薬指示や確認の方法の見直し、服薬介助の方法の見直し、薬の容器やラベルの区別しやすいものへの変更などが対策となります。
実施時期には、対応策を実施する予定の時期を記載します。できるだけ早期に実施することが望ましいですが、現実的に可能な範囲で設定しましょう。実施者には、対応策を実施する担当者や責任者を記載します。できるだけ具体的に名前や役職を記載しましょう。効果検証には、対応策の効果をどのように検証するかを記載します。例えば、事故の発生件数や頻度の減少、利用者や職員の満足度の向上、事故の発生リスクの低減などが指標となります。
⑨その他
その他には、事故報告書に記載しきれなかった重要なことや、補足的なことを記載します。例えば、事故に関する資料や証拠、事故に関する関係者の意見や感想、事故に関する反省や感想などが記載される場合があります。
以上が、介護事故報告書の書き方の例です。事故報告書は、事故の発生・再発を防止するために重要な書類です。事故が発生した場合は、適切に記録し、報告し、共有しましょう。また、事故報告書の書き方については、以下のサイト¹²³⁴⁵も参考にしてください。
ソース:2024/2/20 (1) 介護事故報告書とは？書き方や注意点を解説｜テンプレート付. https://www.komon-lawyer.jp/industry-type/kaigo/houkokusyo/. (2) 【例文あり】介護現場での事故報告書の書き方を解説！上手に .... https://job.kiracare.jp/note/article/37304/. (3) 事故報告書の書き方ひとつで介護事故が減る！ 本気のあなたに .... https://qol.konicaminolta.jp/hitomeq/column/2201-03. (4) 介護の事故報告書を書く目的は？記入例と合わせて解説【現役 .... https://carekyo.com/content/list/2511/. (5) 介護の事故報告書 標準様式（エクセルテンプレート）市町村 .... https://carenote.jp/jikohoukokusyo/.
