介護事故は、介護サービスの提供中に利用者に発生する事故のことで、転倒や誤嚥、誤薬などが代表的な例です。介護事故を防ぐためには、事故の原因やリスクを把握し、事故を減らせる仕組みを構築することが重要です。また、事故が起きた場合には、適切な対応と報告を行うことが必要です。この記事では、介護事故の種類と予防方法、発生時の対処方法について詳しく解説します。
介護事故の種類と発生例
介護事故にはいくつかの種類があります。ここでは代表的なものを3つ挙げ、発生例とともに紹介します。
転倒
介護事故のなかでも非常に割合が高く、加齢による筋力や視力、バランス感覚の衰えが主な原因となっています。事故後に歩行困難や寝たきりになることが多く、骨折や合併症で死亡するケースも少なくありません。介護者のミスが転倒につながる場合もあります。[^1^][1]
- 自力で立ち上がろうとしてふらついた
- 後方から声をかけられ、振り向いた時にバランスを崩した
- 車椅子の足載せ台（フットサポート）に足を乗せたまま、立ち上がろうとした
誤嚥
飲食物が気管に入ってしまう現象です。唾液の減少や歯の欠損が原因となり、飲食物をうまく飲み込めないために起こります。誤嚥性肺炎になるだけでなく、窒息した場合は生死にかかわる重大な事態となります。[^2^][2]
- 食事中にむせたり、せきが出たりした
- 施設のイベントなどで、普段とは異なるメニューを食べた
- 嚥下状態に適さない食事形態を提供された
紛失・破損
利用者の所有物を紛失または破損させてしまう事故は、訪問介護サービスなどで起こりやすい傾向にあります。内容次第では、多額の損害賠償を請求されることにもなりかねません。[^3^][3]
- 買物用に預かったお金をなくした
- 一時的に預かった補聴器や眼鏡を紛失した
- 車椅子を転回させようとして、ドアガラスを割ってしまった
介護事故を予防するためのリスクマネジメント
介護サービスを利用する方には、身体的な衰えだけでなく病気や障害を持っている方も多くいらっしゃいます。そうしたなか、介護事業所や施設で対応にあたれる人数には限りがあるため、介護現場で事故を完全になくすのは難しいかもしれません。しかし、一定の対策を行えば事故の発生リスクを軽減することは可能です。ここからは、介護事故を予防するためのリスクマネジメントを紹介します。
事故を減らせる仕組みを構築する
介護事故は職員のミスだけでなく、施設の設備や器具に問題があるなど、外的要因によって発生することもあります。そのため、職員の意識を高めるだけでなく、環境要因についてもきちんと整備していくことが大切です。例えば、誤薬事故の防止策として、薬を持ち出す際に利用者の名前を読み上げるのが一般的ですが、これだけだと十分な対策とはいえません。顔写真付きのお薬チェックシートを作って照合を行うなどすれば、万が一配薬ミスがあったとしても直前で気付くことができるでしょう。リスクマネジメントを行う際は、事故を減らせるような仕組みを整えることが大切です。職員の意識や能力に依存せず、職場が一体となって「ミスが起こりにくい環境作り」を行うことが求められます。
防げる事故に対する防止策を徹底する
介護事故を減らすためには、「何が防げる事故なのか」「どうすれば防げるのか」を明確にすることが必要です。防げる事故に対しては、事前に防止策を立てて徹底することが大切です。例えば、転倒事故の防止策として、以下のようなことが挙げられます。
- 利用者の身体状況や転倒歴を把握し、個別に対応する
- 転倒しやすい場所や時間帯を特定し、注意する
- 床や廊下などの滑りやすい箇所を改善する
- 車椅子や杖などの移動補助具を適切に使用する
- 利用者の靴や服装に注意する
防げる事故に対する防止策は、事業者や施設の方針や規定に沿って実施することが望ましいです。また、職員間での情報共有や研修なども効果的な手段です。防げる事故は、防止策を徹底することで発生率を下げることができます。
事故が起きた場合の対応と報告を行う
介護事故を完全になくすことは難しいかもしれませんが、事故が起きた場合には、適切な対応と報告を行うことが重要です。事故が起きた場合の対応と報告には、以下のようなことが含まれます。
- 利用者の安全確保と応急処置を行う
- 利用者や家族に事故の内容と謝罪を伝える
- 事故の原因や経過、対応内容を記録する
- 事故の報告書を作成し、関係機関に提出する
- 事故の再発防止策を検討し、実施する
事故が起きた場合には、利用者の安全と信頼を第一に考えることが大切です。事故の内容や対応を隠したり、責任を回避したりすることは絶対に避けるべきです。事故の報告や記録は、事故の分析や再発防止に役立つだけでなく、法的な責任や損害賠償の問題にも関わってきます。事故が起きた場合には、適切な対応と報告を行うことが求められます。
まとめ
介護事故は、介護サービスの提供中に利用者に発生する事故のことで、転倒や誤嚥、誤薬などが代表的な例です。介護事故を防ぐためには、事故の原因やリスクを把握し、事故を減らせる仕組みを構築することが重要です。また、事故が起きた場合には、適切な対応と報告を行うことが必要です。介護事故は、利用者の生命や健康に深刻な影響を及ぼすだけでなく、介護者や事業者にも大きな責任や負担をもたらします。介護事故を予防するためには、リスクマネジメントを行うことが大切です。
