介護の日は、毎年2月22日に制定された記念日で、介護に関わる人々の貢献をたたえるとともに、介護の社会的課題について考える機会となっています。介護の日にちなんで、今回は介護保険事業計画について解説します。介護保険事業計画とは、国や地方自治体が策定する計画で、介護保険の保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針や目標を定めています。現在は第8期計画が実施されていますが、2024年4月からは第9期計画がスタートします。第9期計画では、2025年に団塊の世代が全員75歳以上となることや、2040年に向けた人口減少や高齢化の進行を見据えて、地域包括ケアシステムの深化や介護人材の確保、介護現場の生産性向上などの重要な課題に取り組むことが求められます。この記事では、介護保険事業計画の概要と第9期計画のポイントを紹介します。
介護保険事業計画とは
介護保険事業計画とは、介護保険法に基づいて、国、都道府県、市町村がそれぞれ策定する計画です。3年間を1期として、介護保険の保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針や目標を定めています。国は、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指針を定めます。都道府県は、市町村の計画を踏まえて、介護サービスの量の見込みや必要定員総数、市町村への支援内容や目標などを定めた都道府県介護保険事業支援計画を定めます。市町村は、区域の設定や介護サービスの量の見込み、介護予防や重度化防止の取組内容や目標などを定めた市町村介護保険事業計画を定めます。
第9期計画のポイント
第9期計画は、2024年4月から2026年3月までの3年間を対象とする計画です。第9期計画の策定に当たっては、第8期計画における目標の達成状況の点検や評価、実態把握のための各種調査やヒアリングの結果の分析、地域分析等を行うことが求められています。また、第9期計画の期間内に2025年を迎え、さらに2040年を展望するにあたり、今後、地域包括ケアシステムの更なる深化並びに地域共生社会への発展につなげる効果的な施策の展開を図っていくためには、各保険者において、生産年齢人口の減少等の制約が厳しくなっていく状況下において、地域ごとの実情を踏まえながら、既存の資源を生かした効果的な施策展開及び事業実施に取り組むことが必要となります。第9期計画のポイントは、以下のとおりです。
- 介護サービス基盤の計画的な整備
第9期計画では、医療・介護双方のニーズを有する高齢者の増加を踏まえ、医療・介護を効率的かつ効果的に提供する体制の確保、医療・介護の連携強化が重要となります。また、居宅要介護者のさまざまな介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複合的な在宅サービスの充実を推進することが重要となります。具体的には、多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多様なサービス提供事業者を含め、地域の関係者と共有しながら、中長期的なサービス需要の見込み等を適切に捉えて、施設・サービス種別の変更など既存施設・事業所のあり方も含め検討し、地域の実情に応じて介護サービス基盤を計画的に確保していく必要があります。
- 地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取組
第9期計画では、地域包括ケアシス
第9期計画では、地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取組として、以下の点が重要となります。
- 地域包括ケアセンターの機能強化
地域包括ケアセンターは、地域の介護サービスの調整や連携、介護予防や重度化防止の支援、高齢者や家族の相談窓口など、地域包括ケアシステムの中核となる機関です。第9期計画では、地域包括ケアセンターの機能強化を図るために、以下のような取組が求められます。
- 地域包括ケアセンターの体制整備
地域包括ケアセンターの体制整備としては、地域包括ケアセンターの設置基準の見直しや、地域包括ケアセンターの運営費の改善、地域包括ケアセンターの人材確保や育成などが挙げられます。特に、地域包括ケアセンターの人材確保や育成については、介護保険事業計画において、地域包括ケアセンターの必要定員や配置基準、人材育成の方策などを明確に示すことが重要です。
- 地域包括ケアセンターの業務改善
地域包括ケアセンターの業務改善としては、地域包括ケアセンターの業務内容や手順の見直しや、地域包括ケアセンターの業務負担の軽減、地域包括ケアセンターの業務効率化や生産性向上などが挙げられます。特に、地域包括ケアセンターの業務効率化や生産性向上については、ICTの活用や業務分担の見直し、業務標準化や業務改善のPDCAサイクルの確立などを行うことが重要です。
- 地域包括ケアセンターの連携強化
地域包括ケアセンターの連携強化としては、地域包括ケアセンターと地域の関係者との情報共有や協働、地域包括ケアセンターと医療機関や介護サービス事業者との連携、地域包括ケアセンターと地域のネットワークやコミュニティとの連携などが挙げられます。特に、地域包括ケアセンターと医療機関や介護サービス事業者との連携については、医療・介護の一体的な提供のために、地域包括ケアセンターが医療・介護の調整役として積極的に関与することが重要です。
- 地域包括ケアセンターの体制整備
- 介護予防・重度化防止の推進
介護予防・重度化防止は、高齢者の健康寿命の延伸や介護負担の軽減、介護サービスの需要抑制などに資する重要な施策です。第9期計画では、介護予防・重度化防止の推進として、以下のような取組が求められます。
- 介護予防・重度化防止の対象者の拡大
介護予防・重度化防止の対象者の拡大としては、要支援者や要介護者だけでなく、要介護認定前の高齢者や健康な高齢者も含めた広範な高齢者に対して、介護予防・重度化防止の支援を行うことが重要です。具体的には、地域包括ケアセンターが高齢者のニーズや状況を把握し、個別の支援計画を作成し、適切なサービスやプログラムを提供することが求められます。
- 介護予防・重度化防止の内容の充実
介護予防・重度化防止の内容の充実としては、高齢者の身体機能や認知機能、生活機能、社会参加などの多面的な側面に配慮した、効果的かつ効率的な介護予防・重度化防止の支援を行うことが重要です。具体的には、高齢者の個別のニーズや目標に応じて、運動や食事、生活習慣の改善、認知症の予防や早期発見、孤立やうつの予防や対策などのサービスやプログラムを提供することが求められます。
- 介護予防・重度化防止の効果の検証
介護予防・重度化防止の効果の検証としては、高齢者の介護予防・重度化防止の支援の効果を定量的に評価し、その結果をフィードバックして、支援の改善や改善策の検討を行うことが重要です。具体的には、高齢者の身体機能や認知機能、生活機能、社会参加などの指標を用いて、介護予防・重度化防止の支援の前後での変化や、介護予防・重度化防止の支援を受けた高齢者と受けていない高齢者との比較などを行うことが求められます。
- 介護予防・重度化防止の対象者の拡大
- 介護人材の確保・育成
介護人材の確保・育成は、介護サービスの質の向上や介護現場の働きやすさの改善に欠かせない重要な施策です。第9期計画では、介護人材の確保・育成として、以下のような取組が求められます。
- 介護人材の定量的な確保
介護人材の定量的な確保としては、介護サービスの需要に応じた介護人材の必要定員の見込みや、介護人材の供給状況や離職率などの分析を行い、介護人材の不足や偏在を解消するための施策を実施することが重要です。具体的には、介護職の魅力化や待遇改善、介護職への転職支援や再就職支援、介護職の採用活動の支援や効果的な広報活動などを行うことが求められます。
- 介護人材の質的な確保
介護人材の質的な確保としては、介護人材のスキルや知識、倫理観などの向上を図るための施策を実施することが重要です。具体的には、介護人材の教育や研修の充実や改善、介護人材のキャリア形成やキャリアアップの支援、介護人材の専門性や多様性の認知や評価の促進などを行うことが求められます。
- 介護人材の働き方の改善
介護人材の働き方の改善としては、介護人材の働きやすさや働きがいの向上を図るための施策を実施することが重要です。具体的には、介護人材の労働時間や休日の確保や管理、介護人材の健康管理やメンタルヘルスの支援、介護人材のワークライフバランスの支援や多様な働き方の実現などを行うことが求められます。
- 介護人材の定量的な確保
まとめ
この記事では、介護の日に関する記事をお手伝いしました。介護保険事業計画とは、国や地方自治体が策定する計画で、介護保険の保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針や目標を定めています。現在は第8期計画が実施されていますが、2024年4月からは第9期計画がスタートします。第9期計画では、2025年に団塊の世代が全員75歳以上となることや、2040年に向けた人口減少や高齢化の進行を見据えて、地域包括ケアシステムの深化や介護人材の確保、介護現場の生産性向上などの重要な課題に取り組むことが求められます。この記事では、介護保険事業計画の概要と第9期計画のポイントを紹介しました。介護の日には、介護に関わる人々の貢献をたたえるとともに、介護の社会的課題について考える機会としましょう。
- 地域包括ケアセンターの機能強化
