介護人材不足は、日本の高齢化社会における深刻な課題です。介護現場では、人手不足や重労働、低賃金などの問題があり、介護職員の離職率も高いと言われています。そこで、介護現場の負担を軽減し、質の高いサービスを提供するために、ICT（情報通信技術）やロボット技術などのテクノロジーの活用が期待されています。この記事では、介護用ICTシステムとは何か、どのように活用されているか、どのようなメリットがあるかを紹介します。
介護用ICTシステムとは
介護用ICTシステムとは、介護現場における業務やサービスにICTを活用したシステムのことです。具体的には、以下のようなものがあります。
- 介護記録システム：介護職員が利用者の状態やサービスの内容をデジタル化して記録・管理するシステムです。タブレットやスマートフォンなどの端末を使って、入力や閲覧ができます。介護記録システムには、介護計画やケアプランの作成・更新、利用者のバイタルや食事・排泄・入浴などの日常生活の記録、介護報酬の請求・精算などの機能があります。介護記録システムの利用により、業務の効率化やミスの防止、情報の共有や連携、品質の向上などが期待できます。
- 見守りシステム：利用者の安全や健康を遠隔で確認・監視するシステムです。カメラやセンサーなどの機器を利用者の居室や施設内に設置して、利用者の動きや生体情報などを検知・送信します。見守りシステムには、転倒や異常行動の検知・通知、生活リズムや健康状態の分析・報告、緊急時の対応・連絡などの機能があります。見守りシステムの利用により、利用者の安心・安全の確保や介護職員の負担軽減、予防・早期発見・早期対応などが期待できます。
- 介護ロボット：介護現場における身体介護や生活支援にロボットを活用するシステムです。ロボットには、アクティブ型とパッシブ型の2種類があります。アクティブ型は、人の動きを検知して自動的に動くロボットで、移乗介助や立位保持などの身体介護や、見守りや会話などの生活支援に用いられます。パッシブ型は、人の動きに応じて動くロボットで、歩行や運動などのリハビリや、衣服着脱や食事などの日常生活動作の支援に用いられます。介護ロボットの利用により、介護職員の負担軽減や利用者の自立支援・機能回復などが期待できます。
介護用ICTシステムの活用事例
介護用ICTシステムは、施設や在宅などの様々な介護現場で活用されています。以下に、いくつかの事例を紹介します。
- 施設での介護記録システムの活用事例：[株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所](https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001001183.pdf)が開発した「介護記録システム」は、介護職員が利用者の状態やサービスの内容をタブレット端末で記録・管理できるシステムです。このシステムを導入した介護施設では、業務時間の約30％の削減や、介護報酬の精算ミスの約90％の減少などの効果が報告されています。また、利用者の状態やサービスの内容をリアルタイムに共有できるため、利用者のニーズに応えたサービスの提供や、職員間の連携の向上も図られています。
- 在宅での見守りシステムの活用事例：[株式会社FUJI](https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/R3_technology_binran.pdf)が開発した「見守りシステム」は、利用者の居室にカメラやセンサーを設置して、利用者の動きや生体情報を遠隔で確認・監視できるシステムです。このシステムを導入した在宅介護サービスでは、利用者の転倒や異常行動の検知・通知や、生活リズムや健康状態の分析・報告などの機能を活用して、利用者の安心・安全の確保や介護職員の負担軽減を図っています。また、利用者と介護職員や家族とのコミュニケーションの促進や、利用者の孤立感の緩和も図られています。
- 施設での介護ロボットの活用事例：[ベストワン株式会社](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjahc/27/1/27_14/_pdf)が開発した「移乗サポートハッピー」は、自力で立つことができない利用者の移乗介助に用いられるアクティブ型の介護ロボットです。このロボットを導入した介護施設では、介護職員が利用者を抱きかかえることなく、安全に移乗させることができるため、介護職員の
背負いや腰痛のリスクを減らしています。また、利用者にとっても、ロボットのサポートにより、移乗時の不安や痛みを軽減できるというメリットがあります。
- 在宅での介護ロボットの活用事例：[株式会社パナソニック]が開発した「リハビリアシストロボット」は、利用者の歩行や運動を支援するパッシブ型の介護ロボットです。このロボットを導入した在宅介護サービスでは、利用者が自宅でリハビリを行うことができるため、介護職員の訪問回数や時間を削減できるとともに、利用者の自立支援や機能回復を促進できるという効果が報告されています。また、利用者の歩行や運動のデータをクラウドに保存・分析することで、利用者の状態や進捗を介護職員や医療機関と共有できるというメリットもあります。
まとめ
介護用ICTシステムは、介護現場の課題を解決し、質の高いサービスを提供するために、有効なテクノロジーの活用です。介護用ICTシステムには、介護記録システムや見守りシステム、介護ロボットなどの様々な種類があり、それぞれに介護現場の業務やサービスに応じた機能やメリットがあります。介護用ICTシステムの活用事例は、施設や在宅などの様々な介護現場で見られ、介護職員の負担軽減や利用者の安心・安全・自立などの効果が報告されています。介護用ICTシステムは、介護人材確保のための重要な取り組みの一つです。
参考リンク：
