介護施設での感染症について知っておきたいこと
介護施設では、高齢者や免疫力の低下した人が多く集まるため、感染症の発生や拡大が起こりやすい環境です。感染症は、介護施設の利用者や職員だけでなく、家族や地域社会にも影響を及ぼす可能性があります。そこで、この記事では、介護施設で発生しやすい感染症の種類や特徴、対策方法などについて解説します。
介護施設で発生しやすい感染症の種類
介護施設で発生しやすい感染症は、主に以下のようなものがあります。
- インフルエンザ：飛沫感染により高熱や全身倦怠感などを引き起こし、肺炎などの重症化や死亡のリスクが高い。
- 感染性胃腸炎（ノロウイルスなど）：接触感染により嘔吐や下痢などを引き起こし、脱水や窒息などの危険性がある。
- 腸管出血性大腸菌感染症：食中毒の原因となる大腸菌により下痢や腹痛などを引き起こし、溶血性尿毒症症候群などの重篤な合併症を起こすこともある。
- 痂皮型疥癬：皮膚に寄生するヒゼンダニによりかゆみやかさぶたなどを引き起こし、皮膚の壊死や感染症のリスクが高まる。
- 結核：結核菌により咳や痰などを引き起こし、肺炎や髄膜炎などの重篤な合併症や死亡のリスクが高い。
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症（MRSA）：抗菌剤に耐性を持つ黄色ブドウ球菌により化膿症や肺炎などを引き起こし、敗血症や多臓器不全などの重篤な合併症や死亡のリスクが高い。
- 緑膿菌感染症：抗菌剤に耐性を持つ緑膿菌により傷や褥瘡などの治りにくい感染症や肺炎などを引き起こし、敗血症や多臓器不全などの重篤な合併症や死亡のリスクが高い。
- 肝炎（B型、C型）：血液や体液を介して感染する肝炎ウイルスにより全身倦怠感や食欲不振などを引き起こし、肝硬変や肝がんなどの重篤な合併症や死亡のリスクが高い。
- HIV感染症：血液や体液を介して感染するHIVにより免疫力が低下し、日和見感染症や悪性腫瘍などを引き起こし、エイズ発症や死亡のリスクが高い。
- 麻疹：飛沫感染により発熱や発疹などを引き起こし、肺炎や脳炎などの重篤な合併症や死亡のリスクが高い。
介護施設での感染症の対策方法
介護施設での感染症の対策方法としては、以下のようなものがあります。
- 予防接種：インフルエンザや麻疹などの予防接種を受けることで、感染症の発症や重症化を防ぐことができます。介護施設の利用者や職員は、定期的に予防接種を受けるようにしましょう。
- 手洗い：手洗いは、感染症の予防に最も効果的な方法の一つです。介護施設では、利用者や職員は、食事前後やトイレ後、利用者の介護や清拭などの前後に、石鹸やアルコール消毒液を使って手洗いをするようにしましょう。
- マスク着用：マスク着用は、飛沫感染を防ぐために有効な方法です。介護施設では、利用者や職員は、咳やくしゃみなどの症状がある場合や、感染症の流行期には、マスクを着用するようにしましょう。
- 個室管理：個室管理は、感染症の拡大を防ぐために必要な方法です。介護施設では、感染症の疑いがある利用者や職員は、個室に隔離し、他の人との接触を避けるようにしましょう。また、個室に入る際には、ガウンや手袋などの防護具を着用するようにしましょう。
- 消毒：消毒は、感染症の原因となる菌やウイルスを除去するために重要な方法です。介護施設では、利用者や職員が触れる可能性のある物や場所などを定期的に消毒するようにしましょう。消毒には、次亜塩素酸ナトリウムやエタノールなどの適切な薬剤を使用するようにしましょう。
介護施設での感染症の対応時の注意点
介護施設での感染症の対応時には、以下のような注意点があります。
- 感染症の疑いがある場合は、早めに医療機関を受診することが必要です。自己判断や自己治療はせず、専門的な診断や治療を受けるようにしましょう。
- 感染症の報告や連絡は、介護施設の管理者や保健所などの関係機関に速やかに行うことが必要です。感染症の発生や拡大の状況を把握し、適切な対策や指導を受けるようにしましょう。
- 感染症の情報や対策は、介護施設の利用者や職員だけでなく、家族や地域社会にも正しく伝えることが必要です。感染症に対する理解や協力を得ることで、感染症の予防や管理に役立ちます。
介護施設での感染症についてのまとめ
介護施設での感染症について、以下のようにまとめることができます。
- 介護施設では、高齢者や免疫力の低下した人が多く集まるため、感染症の発生や拡大が起こりやすい環境です。
- 介護施設で発生しやすい感染症は、インフルエンザや感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌感染症、痂皮型疥癬、結核、MRSA、緑膿菌感染症、肝炎、HIV感染症、麻疹などがあります。
- 介護施設での感染症の対策方法としては、予防接種や手洗い、マスク着用、個室管理、消毒などがあります。
- 介護施設での感染症の対応時には、早めに医療機関を受診し、感染症の報告や連絡を行い、感染症の情報や対策を正しく伝えることが必要です。
介護施設での感染症についての比較表
介護施設での感染症について、以下の表で比較してみましょう。
| 感染症 | 感染経路 | 主な症状 | 重篤な合併症 | 予防接種 |
|---|---|---|---|---|
| インフルエンザ | 飛沫感染 | 高熱、全身倦怠感、咳、のどの痛みなど | 肺炎、心筋炎、脳炎など | あり |
| 感染性胃腸炎 | 接触感染 | 嘔吐、下痢、腹痛、発熱など | 脱水、窒息、電解質異常など | なし |
| 腸管出血性大腸菌感染症 | 食品や水などの経口摂取 | 下痢、腹痛、発熱など | 溶血性尿毒症症候群、腎不全、貧血など | なし |
| 痂皮型疥癬 | 皮膚接触感染 | かゆみ、かさぶた、皮膚の白化など | 皮膚の壊死、二次感染、敗血症など | なし |
| 結核 | 飛沫感染 | 咳、痰、発熱、体重減少など | 肺炎、髄膜炎、脊椎カリエスなど | あり |
| MRSA | 接触感染 | 化膿症、肺炎、敗血症など | 敗血症、多臓器不全、死亡など | なし |
| 緑膿菌感染症 | 接触感染 | 傷や褥瘡などの治りにくい感染症、肺炎、敗血症など | 敗血症、多臓器不全、死亡など | なし |
| 肝炎 | 血液や体液の接触感染 | 全身倦怠感、食欲不振、黄疸など | 肝硬変、肝がん、死亡など | B型はあり、C型はなし |
| HIV感染症 | 血液や体液の接触感染 | 無症候期、日和見感染症、悪性腫瘍など | エイズ発症、死亡など | なし |
| 麻疹 | 飛沫感染 | 発熱、発疹、目や鼻の炎症など | 肺炎、脳炎、死亡など | あり |
