高齢者のパーキンソン病とは？原因、症状、治療法、生活の工夫を解説

パーキンソン病は、脳内のドーパミン生成細胞が減少することで、手足の震えや動作の遅さなどの運動障害を引き起こす病気です。高齢者に多く見られる疾患であり、日本では約11万人が患っています。この記事では、パーキンソン病の原因、症状、治療法、生活の工夫について詳しく解説します。

パーキンソン病の原因とリスク要因

パーキンソン病の原因は、中脳の黒質という部分にあるドーパミン生成細胞が変性・死滅することで、ドーパミンという神経伝達物質が不足することです。ドーパミンは、運動や感情などを制御する重要な役割を果たしています。ドーパミンが減少すると、脳と筋肉の間の信号伝達がうまくいかなくなり、運動障害が起こります。

ドーパミン生成細胞が変性・死滅する原因は、現在のところ明らかではありません。しかし、遺伝的要因や環境要因が関与する可能性が示唆されています。以下に、パーキンソン病のリスク要因として知られているものを挙げます。

加齢：パーキンソン病は、50歳以上から発症することが多く、70歳以上では100人に1人の割合でみられます。加齢に伴ってドーパミン生成細胞が自然に減少することが、病気の発症に影響すると考えられています。
遺伝：パーキンソン病は、家族性のものと散発性のものがあります。家族性のものは、遺伝子の変異が原因で発症することが分かっており、若年発症の場合に多くみられます。散発性のものは、遺伝的要因だけではなく、環境要因も関係していると考えられています。
環境：パーキンソン病の発症には、農薬や重金属などの有害物質の暴露や、頭部外傷などの環境要因も影響するとされています。これらの要因は、ドーパミン生成細胞にストレスやダメージを与えることで、変性・死滅を促進すると考えられています。

パーキンソン病の症状と進行

パーキンソン病の症状は、主に運動障害と非運動症状に分けられます。運動障害は、パーキンソン病の代表的な症状であり、以下の4つが挙げられます。

振戦（しんせん）：手足や顎などの体の一部が、自分の意思とは関係なく震える症状です。特に安静時に顕著になります。パーキンソン病の患者の約70%にみられます。
固縮（こしゅく）：筋肉や関節が硬くなり、動きにくくなる症状です。筋肉の緊張が高まり、痛みやこわばりを感じることがあります。パーキンソン病の患者の約90%にみられます。
無動（むどう）：動作の開始や継続が困難になる症状です。歩行や立ち上がりなどの日常動作が遅くなり、小刻みになることがあります。パーキンソン病の患者の約90%にみられます。
姿勢反射障害：姿勢を安定させるための反射が低下する症状です。前屈姿勢になりやすく、バランスを崩しやすくなります。パーキンソン病の患者の約40%にみられます。

非運動症状は、運動障害以外の症状であり、以下のようなものがあります。

自律神経障害：血圧や体温などの自律神経の調節がうまくいかなくなる症状です。起立性低血圧、便秘、排尿障害、発汗異常などがみられます。
精神症状：気分や思考などの精神面に影響する症状です。うつ病、不安障害、幻覚や妄想などがみられます。
認知症状：記憶や判断などの認知機能に影響する症状です。注意力や集中力の低下、物忘れ、判断力の低下などがみられます。
睡眠障害：睡眠の質や量に影響する症状です。入眠困難、睡眠中断、昼間の眠気、夢遊病などがみられます。
感覚障害：視覚や嗅覚などの感覚に影響する症状です。視界のぼやけ、嗅覚の低下、痛みやしびれなどがみられます。

パーキンソン病の症状は、個人差が大きく、進行の速さや重症度も異なります。一般的には、症状は徐々に悪化していき、日常生活に支障をきたすようになります。パーキンソン病の進行は、以下の5段階に分類されます。

第1期：片側のみに運動障害がみられる。日常生活にはほとんど影響がない。
第2期：両側に運動障害がみられる。姿勢や歩行に問題が出始める。日常生活にはやや影響がある。
第3期：運動障害がさらに進行し、バランスを保つのが困難になる。転倒の危険が高まる。日常生活にはかなり影響がある。
第4期：運動障害が重度になり、歩行には杖や歩行器が必要になる。自立生活は困難になる。
第5期：運動障害が極度になり、寝たきりになる。介護が必要になる。

パーキンソン病の治療は、症状の改善や進行の遅延を目的として行われます。現在のところ、パーキンソン病の根本的な治療法はありません。パーキンソン病の治療には、主に以下の3つの方法があります。

薬物療法：ドーパミンの不足を補う薬や、ドーパミンの働きを増強する薬などを服用する。運動障害の緩和に効果がある。
外科療法：脳の一部に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで、運動障害を抑制する。薬物療法に反応しない重症な患者に適用される。
リハビリテーション：運動療法や作業療法などを行うことで、筋力や柔軟性、バランス感覚などを維持・向上させる。日常生活の自立度やQOL（生活の質）の向上に効果がある。

パーキンソン病の治療は、個々の症状や進行度に応じて、医師と相談しながら決める必要があります。また、治療には副作用や合併症のリスクも伴うことがあるので、注意が必要です。パーキンソン病の治療に関する詳細は、[こちら](https://medley.life/diseases/54b52af2517cef641a0041b4/details/knowledge/notice/)をご覧ください。

パーキンソン病の治療だけでなく、日常生活の工夫も重要です。パーキンソン病の人は、食事や入浴、睡眠などの生活習慣に工夫をすることで、症状の軽減や予防に役立つことがあります。また、家や職場などの環境にも工夫をすることで、安全性や快適性を高めることができます。パーキンソン病の日常生活の工夫に関する詳細は、[こちら](https://pd-online.jp/treatment/treatment10.html)をご覧ください。

パーキンソン病の治療法や日常生活の工夫を表にまとめました。参考にしてください。

項目	内容	注意点
薬物療法	ドーパミンの不足を補う薬や、ドーパミンの働きを増強する薬などを服用する。	薬の種類や量は、医師の指示に従うこと。薬の効果は個人差があること。薬には副作用や耐性があること。
外科療法	脳の一部に電極を埋め込み、電気刺激を与えることで、運動障害を抑制する。	手術にはリスクがあること。手術の適応は限られていること。手術後も薬物療法が必要なこと。
リハビリテーション	運動療法や作業療法などを行うことで、筋力や柔軟性、バランス感覚などを維持・向上させる。	リハビリテーションは定期的に行うこと。リハビリテーションの内容は、専門家の指導に従うこと。
食事の工夫	食べ物の飲み込みが悪くなることを防ぐために、食品や食べ方に工夫をする。食器にも工夫をすることで、食事を楽にする。	食事にトロミをつけたり、小さくしたりペースト状にしたりすること。少しずつ口に運び、ゆっくり食べること。箸よりもスプーンやフォークを使うこと。食器の下にすべり止めを敷くこと。
入浴の工夫	浴槽に移動するときや身体を洗うときに工夫をすることで、転倒や動作の困難さを防ぐ。	浴槽の横に手すりを設置したり、高めの椅子を置いたりすること。身体を洗うときは高めの椅子や肘掛けのある椅子を使うこと。床にすべり止めのマットを敷くこと。
睡眠の工夫	睡眠の質や量に影響する症状を改善するために、生活習慣や寝具に工夫をする。	規則正しい生活を送ること。適度な高さのベッドや硬めのマットレスが寝返りを打ちやすいこと。