高齢者の誤嚥性肺炎について

高齢者の誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などが気道に入ってしまい、肺に雑菌が侵入して炎症が生じる病気のことです。高齢者に多く見られる病気であり、初期症状が風邪と似ていることから、少しでも怪しいと思ったら早い段階で医療機関を受診することがポイントです。この記事では、誤嚥性肺炎の原因や症状、予防方法について詳しく解説します。

誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎の原因は、嚥下（えんげ）機能の低下と口腔内の細菌の増加です。嚥下機能とは、食べ物を口の中で噛み砕き、舌を使って口の奥に送り込んで飲み込む一連の動作のことです。高齢者は、加齢や病気（脳梗塞や脳出血など）によって、この嚥下機能が衰えてしまいます。その結果、食べ物や唾液などが気道に入りやすくなり、咳をして排出する力も弱くなります。また、高齢者は口の中が清潔に保たれていないことも多く、肺炎をもたらす細菌が繁殖しやすくなっています。これらの細菌が気道から肺に侵入すると、肺炎を発症するリスクが高まります。

誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎の症状は、風邪と似ていることが多く、熱が出たり、咳や痰が出たりします。しかし、高齢者の場合、これらの典型的な症状が目立たないこともあります。そのため、以下のような症状にも注意が必要です。

元気がない
食欲がない
ぼんやりとしている
息苦しい
意識障害がある
脱水症状がある

これらの症状が見られた場合は、誤嚥性肺炎の可能性がありますので、早めに医師に相談しましょう。

誤嚥性肺炎の治療法

誤嚥性肺炎の治療法は、抗菌薬を使用した薬物療法が基本です。原因となる細菌を倒すことが第一の目的です。検査で原因菌を特定した上で、有効な抗菌薬を内服あるいは点滴で投与します。症状が重い場合や、呼吸が苦しい場合は、入院して治療を受ける必要があります。また、食事を止めて絶食状態にすることもあります。絶食する理由は、さらなる誤嚥を防ぐためと、嚥下機能を回復させるためのリハビリテーションを行うためです。絶食中は栄養補給の点滴を行います。症状が改善されれば、柔らかいゼリー食や嚥下食を摂っていただきます。

誤嚥性肺炎の予防方法

誤嚥性肺炎の予防方法は、食事や日常生活において心がけることがあります。以下に具体的な方法を紹介します。

食事において心がけること

よく噛んで、食べ物を小さくして飲み込みやすくする
ゆっくりと食事をする
一度に口の中に多量の食べ物を入れない
喉に詰まるようなものや堅いものは食べない
体力が落ちているときは、ゼリー食やおかゆなどの柔らかいものを食べる
食べる姿勢に気をつける（横にならずに座って食べる、食後すぐに横にならない）

日常生活において心がけること

口の中を常に清潔にする（歯磨きやうがいをする、歯を治療する）
規則正しい生活をする（睡眠や運動をする、栄養バランスを考える）
寝る姿勢に気をつける（頭を高くするなど）
肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種する

まとめ

高齢者の誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液などが気道に入ってしまい、肺に雑菌が侵入して炎症が生じる病気です。初期症状が風邪と似ていることから、見逃されがちですが、重症化すると死に至ることもあります。治療法は抗菌薬を使用した薬物療法が基本ですが、予防が何よりも大切です。食事や日常生活において心がけることを実践することで、誤嚥性肺炎の発症を予防することができます。高齢者の誤嚥性肺炎は、見過ごされがちな病気ですが、早期発見・早期治療が重要です。高齢者の方やそのご家族の方は、誤嚥性肺炎について知っておくことが大切です。

項目	内容
原因	嚥下機能の低下と口腔内の細菌の増加
症状	熱、咳、痰、元気がない、食欲がない、ぼんやりとしている、息苦しい、意識障害、脱水症状
治療法	抗菌薬を使用した薬物療法、入院、絶食、嚥下食
予防方法	食事において心がけること（よく噛む、ゆっくり食べる、一度に多量の食べ物を入れない、喉に詰まるようなものや堅いものは食べない、体力が落ちているときは柔らかいものを食べる、食べる姿勢に気をつける）日常生活において心がけること（口の中を清潔にする、規則正しい生活をする、寝る姿勢に気をつける、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種する）