年金は老後の生活を支える大切な収入源です。しかし、年金の制度や受給方法は複雑で、どうすれば最もお得に受け取れるのか分からない人も多いでしょう。この記事では、2022年4月から始まる年金大改正の内容や、年金の受給開始時期や受給額を増やす方法など、年金の受け取り方やお得情報についてわかりやすく解説します。
目次
2022年4月から始まる年金大改正の内容とは?
2022年4月から、年金の制度が大きく変わります。主な変更点は以下のとおりです。
- 厚生年金に加入できる人の範囲が広がる
- 年金の受給開始時期の選択肢が拡大し、受給額の増額率が高くなる
- 年金の受給額の見直し方法が変わる
厚生年金に加入できる人の範囲が広がる
現在、厚生年金に加入できるのは、従業員が501人以上の企業で週20時間以上働く人や、公務員、教員などの特定の職業の人です。しかし、2022年4月からは、従業員が10人以上の企業で週10時間以上働く人も厚生年金に加入できるようになります。これにより、約700万人のパートやアルバイトの人が厚生年金に加入できると見込まれています。
厚生年金に加入すると、国民年金よりも高い年金額を受け取ることができます。また、厚生年金に加入している間は、国民年金の保険料が免除されます。ただし、厚生年金の保険料は国民年金よりも高いので、収入に応じて負担が増えることもあります。厚生年金に加入するかどうかは、自分の収入や将来の年金額を考えて決める必要があります。
年金の受給開始時期の選択肢が拡大し、受給額の増額率が高くなる
現在、年金の受給開始時期は、原則として65歳からですが、60歳から70歳までの間で自由に選ぶことができます。ただし、受給開始時期を遅らせると、受給額が増えるというメリットがあります。これを「繰り下げ受給」といいます。逆に、受給開始時期を早めると、受給額が減るというデメリットがあります。これを「繰り上げ受給」といいます。
2022年4月からは、年金の受給開始時期の選択肢がさらに拡大し、75歳まで選ぶことができるようになります。また、受給開始時期を遅らせると、受給額が増える割合も高くなります。例えば、65歳から受給する場合の受給額を100とすると、現在は70歳から受給すると142になりますが、2022年4月からは184になります。逆に、60歳から受給すると、現在は70になりますが、2022年4月からは64になります。
年金の受給開始時期を選ぶときは、自分の寿命や生活費、収入などを考慮する必要があります。受給開始時期を遅らせると、受給額は増えますが、受給期間は短くなります。受給開始時期を早めると、受給額は減りますが、受給期間は長くなります。どちらが得かは、一概には言えませんが、一般的には、長生きする見込みがある人や、収入が少ない人は、受給開始時期を遅らせる方がお得です。逆に、短命な家系の人や、収入が多い人は、受給開始時期を早める方がお得です。
年金の受給額の見直し方法が変わる
現在、年金の受給額は、毎年、物価や経済成長に応じて見直されます。これを「マクロ経済スライド」といいます。物価が上がると、年金額も上がりますが、経済成長が低下すると、年金額も下がります。これは、年金制度の持続可能性を確保するための仕組みです。
2022年4月からは、年金の受給額の見直し方法が変わります。具体的には、以下の3点が変更されます。
- 年金額の下方修正の限度額が設けられる
- 年金額の上方修正の限度額が撤廃される
- 年金額の見直しのタイミングが変わる
年金額の下方修正の限度額が設けられるというのは、年金額が下がりすぎないようにするための措置です。現在は、経済成長が低下すると、年金額も無制限に下がりますが、2022年4月からは、年金額が前年度の99.5%を下回 らないようにする制限が設けられます。この制限は、毎年、物価や経済成長に応じて変動します。
年金額の上方修正の限度額が撤廃されるというのは、年金額が上がりすぎないようにするための措置がなくなるということです。現在は、年金額が上がるときには、上がり幅に上限がありますが、2022年4月からは、上がり幅に上限がなくなります。これは、物価が急激に上昇する場合に、年金額がそれに追いつけるようにするための措置です。
年金額の見直しのタイミングが変わるというのは、年金額の見直しをする時期が変わるということです。現在は、年金額の見直しは、毎年10月に行われますが、2022年4月からは、毎年4月に行われるようになります。これは、年金額の見直しに使う物価や経済成長のデータが、より新しいものになるようにするための措置です。
年金の受給開始時期を選ぶポイントとは?
年金の受給開始時期は、自分のライフプランや収入に合わせて選ぶことができます。しかし、どの時期に受給するのが最もお得かは、一概には言えません。年金の受給開始時期を選ぶときには、以下のポイントを参考にしてください。
- 年金の受給開始時期と受給額の関係を把握する
- 自分の寿命や健康状態を考える
- 他の収入や資産の状況を考える
- 税金や社会保険料の影響を考える
年金の受給開始時期と受給額の関係を把握する
年金の受給開始時期と受給額の関係は、繰り上げ受給と繰り下げ受給の割合によって決まります。繰り上げ受給と繰り下げ受給の割合は、2022年4月から変更されるので、注意してください。以下の表は、2022年4月から適用される割合を示したものです。
受給開始時期 | 受給額の割合(65歳を100とする) |
---|---|
60歳 | 64 |
61歳 | 68 |
62歳 | 72 |
63歳 | 76 |
64歳 | 80 |
65歳 | 100 |
66歳 | 108 |
67歳 | 116 |
68歳 | 124 |
69歳 | 132 |
70歳 | 184 |
71歳 | 192 |
72歳 | 200 |
73歳 | 208 |
74歳 | 216 |
75歳 | 224 |
この表から分かるように、受給開始時期を遅らせると、受給額は増えますが、受給開始時期を早めると、受給額は減ります。受給開始時期を選ぶときは、自分の年金額を計算して、どの時期に受給するのが最もお得かを比較してみましょう。
自分の寿命や健康状態を考える
年金の受給開始時期を選ぶときには、自分の寿命や健康状態を考えることも重要です。年金は、一度受給し始めると、死ぬまで支払われます。しかし、受給開始時期を遅らせると、受給期間は短くなります。受給期間が短いと、受給額が高くても、トータルで受け取る金額は少なくなる可能性があります。逆に、受給開始時期を早めると、受給期間は長くなります。受給期間が長いと、受給額が低くても、トータルで受け取る金額は多くなる可能性があります。
自分の寿命や健康状態を考えるときは、以下の点に注意してください。
- 日本人の平均寿命は、男性は81.4歳、女性は87.5歳ですが、個人差は大きいです。自分の家系や生活習慣などを参考にして、自分の寿命を推測してみましょう。
- 健康状態は、年金の受給開始時期だけでなく、老後の生活の質にも影響します。健康状態が良いと、老後の生活費も少なくて済みますが、健康状態が悪いと、医療費や介護費などがかかります。健康状態を維持するためには、適度な運動や食事、睡眠などが必要です。
一般的には、長生きする見込みがある人や、健康状態が良い人は、受給開始時期を遅らせる方がお得です。逆に、短命な家系の人や、健康状態が悪い人は、受給開始時期を早める方がお得です。
他の収入や資産の状況を考える
年金の受給開始時期を選ぶときには、他の収入や資産の状況を考えるこ とも重要です。年金は、老後の生活を支える収入源の一つですが、年金だけでは足りない場合もあります。他の収入や資産があれば、年金の受給開始時期を遅らせることができますが、他の収 入や資産がなければ、年金の受給開始時期を早める必要があります。
他の収入や資産の状況を考えるときは、以下の点に注意してください。
- 他の収入としては、仕事や副業、年金以外の社会保障などがあります。仕事や副業を続けることができれば、年金の受給開始時期を遅らせることができますが、仕事や副業には、税金や社会保険料などの負担もあります。また、仕事や副業の収入が多いと、年金の受給額が減る場合もあります。これを「年金収入分離調整」といいます。年金以外の社会保障としては、障害年金や遺族年金などがあります。これらの年金は、基礎年金や厚生年金とは別に受け取ることができますが、受給条件や受給額は異なります。
- 資産としては、貯金や預金、株式や投資信託、不動産や貴金属などがあります。資産があれば、年金の受給開始時期を遅らせることができますが、資産には、リスクや手数料、税金などの負担もあります。また、資産の収入が多いと、年金の受給額が減る場合もあります。これを「年金所得分離調整」といいます。
一般的には、他の収入や資産が多い人は、年金の受給開始時期を遅らせる方がお得です。逆に、他の収入や資産が少ない人は、年金の受給開始時期を早める方がお得です。
税金や社会保険料の影響を考える
年金の受給開始時期を選ぶときには、税金や社会保険料の影響を考えることも重要です。年金は、所得税や住民税の対象となります。また、年金を受給すると、健康保険や介護保険の被保険者となります。税金や社会保険料は、年金の受給額や他の収入に応じて変わります。税金や社会保険料が高くなると、手取りの年金額が減ります。
税金や社会保険料の影響を考えるときは、以下の点に注意してください。
- 所得税や住民税は、年金の受給額や他の収入に応じて累進課税されます。累進課税とは、収入が多いほど税率が高くなるという仕組みです。年金の受給額や他の収入が多いと、所得税や住民税の負担が高くなります。また、年金の受給額や他の収入が一定の基準を超えると、所得控除や税額控除が減る場合もあります。これを「所得のふるさと納税制度」といいます。
- 健康保険や介護保険は、年金の受給額や他の収入に応じて均等割されます。均等割とは、収入に関係なく同じ額を支払うという仕組みです。年金の受給額や他の収入が多いと、健康保険や介護保険の負担は変わりません。しかし、年金の受給額や他の収入が少ないと、健康保険や介護保険の負担が重くなります。
一般的には、税金や社会保険料の負担が高くなると、年金の受給開始時期を早める方がお得です。逆に、税金や社会保険料の負担が低くなると、年金の受給開始時期を遅らせる方がお得です。
年金の受給額を増やす3つのお得な方法とは?
年金の受給開始時期を選ぶことで、年金の受給額を増やすことができますが、それ以外にも、年金の受給額を増やすことができるお得な方法があります。ここでは、年金の受給額を増やすことができる3つのお得な方法を紹介します。
- 年金の再計算を申請する
- 年金の支払い方法を変更する
- 年金の相互扶助制度を利用する
年金の再計算を申請する
年金の再計算とは、年金の受給額を見直してもらうことです。年金の受給額は、年金の受給開始時に決まりますが、その後に収入や家族構成などが変わると、年金の受給額も変わる可能性があります。年金の再計算を申請すると、年金の受給額が増える場合があります。
年金の再計算を申請するときは、以下の点に注意してください。
- 年金の再計算を申請できるのは、年金の受給開始後に収入や家族構成などが変わった人だけです。年金の受給開始前に収入や家族構成などが変わった人は、年金の再計算を申請できません。
- 年金の再計算を申請するには、年金事務所に申請書を提出する必要があります。申請書には、変更した収入や家族構成などの詳細を記入する必要があります。また、収入証明書や戸籍謄本などの証明書類も必要です。
- 年金の再計算を申請すると、年金の受給額が増える場合もあれば、減る場合もあります。年金の再計算を申請する前に、自分 の年金額を計算して、どのように変わるかを確認してみましょう。
年金の支払い方法を変更する
年金の支払い方法とは、年金の受給額を一定にするか、変動させるかを選ぶことです。年金の支払い方法は、年金の受給開始時に決めることができますが、その後に変更することもできます。年金の支払い方法を変更すると、年金の受給額が増える場合があります。
年金の支払い方法を変更するときは、以下の点に注意してください。
- 年金の支払い方法には、一定額方式と変動額方式の2種類があります。一定額方式とは、年金の受給額を一定にする方法です。変動額方式とは、年金の受給額を物価や経済成長に応じて変動させる方法です。
- 年金の支払い方法を変更するには、年金事務所に申請書を提出する必要があります。申請書には、変更したい支払い方法を記入する必要があります。
- 年金の支払い方法を変更すると、年金の受給額が増える場合もあれば、減る場合もあります。年金の支払い方法を変更する前に、自分の年金額を計算して、どのように変わるかを確認してみましょう。
一般的には、物価や経済成長が高いと、変動額方式の方がお得です。逆に、物価や経済成長が低いと、一定額方式の方がお得です。
年金の相互扶助制度を利用する
年金の相互扶助制度とは、年金の受給額を一時的に減らして、将来の年金額を増やすことができる制度です。年金の相互扶助制度を利用すると、年金の受給額が増える場合があります。
年金の相互扶助制度を利用するときは、以下の点に注意してください。
- 年金の相互扶助制度を利用できるのは、年金の受給開始後に収入や家族構成などが変わった人だけです。年金の受給開始前に収入や家族構成などが変わった人は、年金の相互扶助制度を利用できません。
- 年金の相互扶助制度を利用するには、年金事務所に申請書を提出する必要があります。申請書には、減らしたい年金額や期間を記入する必要があります。
- 年金の相互扶助制度を利用すると、年金の受給額が減る期間は、最長で5年間です。減らした年金額は、将来の年金額に加算されます。加算される年金額は、減らした年金額に利息を加えたものです。
一般的には、収入や資産が多い人や、健康状態が良い人は、年金の相互扶助制度を利用する方がお得です。逆に、収入や資産が少ない人や、健康状態が悪い人は、年金の相互扶助制度を利用する方が不利です。
まとめ
この記事では、年金の受け取り方やお得情報について、以下の点を解説しました。
- 2022年4月から始まる年金大改正の内容とは?
- 年金の受給開始時期を選ぶポイントとは?
- 年金の受給額を増やす3つのお得な方法とは?
年金は、老後の生活を支える大切な収入源です。しかし、年金の制度や受給方法は複雑で、どうすれば最もお得に受け取れるのか分からない人も多いでしょう。この記事を参考にして、自分に合った年金の受け取り方を考えてみましょう。