オランダの介護市場の現状と日本との比較

オランダは、世界で最も高齢化が進んだ国の一つです。2020年の高齢化率は19.2%で、日本の27.3%に次いで第2位です[^1^][1]。オランダでは、高齢者の介護に関して、社会保険方式と地方自治体の税財源方式の二つの制度が併存しています[^2^][2]。この記事では、オランダの介護市場の現状と、日本との比較を行います。

オランダの介護制度の概要

オランダの介護制度は、以下の二つに分類されます。

社会保険方式による介護保障：介護保険法に基づき、公的医療保険に加入している全国民が被保険者となり、介護金庫が保険給付を行う。要介護認定は3段階で、介護サービスの種類や量は要介護度に応じて決まる。利用者負担は一定所得以上の場合は2～3割、それ以外は1割である。
地方自治体の税財源による社会サービス：社会サービス法に基づき、基礎的自治体であるコミューンが、支援を必要とする者に対して社会サービス（介護サービスを含む）を提供する。サービスの提供にはミーンズテスト（所得審査）が行われる。利用者負担は所得による応能負担となる。

オランダの介護制度の特徴は、年齢による区別がなく、全国民が対象であること、社会保険方式と地方自治体の税財源方式の二つの制度が併存していること、介護サービスの提供には民間事業者が多く関与していることなどが挙げられます[^2^][2]。

オランダの介護市場の規模と動向

オランダの介護市場の規模は、2019年には約260億ユーロ（約3.3兆円）で、GDPの3.4%を占めています[^3^][3]。介護市場の約8割は社会保険方式による介護保障であり、残りの約2割は地方自治体の税財源による社会サービスです[^4^][4]。

オランダの介護市場の動向としては、以下のような特徴があります。

高齢者の在宅介護の推進：オランダでは、高齢者の在宅での自立を重視し、在宅介護の充実を図っています。2015年には、社会保険方式による介護保障の対象から、要介護度の軽い者を除外し、地方自治体の税財源による社会サービスの対象としました。これにより、在宅での介護サービスの需要が増加し、ホームヘルプや訪問看護などの在宅サービスの市場が拡大しています[^5^][5]。
介護施設の多様化と高付加価値化：オランダでは、高齢者のニーズに応えるため、介護施設の多様化と高付加価値化が進んでいます。特別住宅（ケア付き住宅）と呼ばれる、自宅で提供されるサービスと同等のサービスを受けられる施設が増加しており、2019年には約13万人が利用しています[^6^][6]。また、高齢者のライフスタイルや趣味に合わせた施設や、認知症の高齢者に特化した施設など、高付加価値なサービスを提供する施設も増えています[^7^][7]。
介護人材の不足と外国人労働者の活用：オランダでは、高齢化の進行に伴い、介護人材の不足が深刻化しています。2020年には、介護分野の有効求人倍率は2.69倍であり、介護職員の平均年収は約300万円～約400万円です[^8^][8]。介護人材の確保のために、オランダでは、外国人労働者の受け入れを積極的に行っています。2019年には、介護分野の外国人労働者は約2万人であり、そのうち約半数がEU圏外からの移民です[^9^][9]。

オランダと日本の介護の比較

オランダと日本の介護に関する比較を以下の表に示します。

項目	オランダ	日本
高齢化率（2020年）	19.2%	27.3%
介護制度の種類	社会保険方式と地方自治体の税財源方式の併存	社会保険方式のみ
介護制度の対象	全国民（年齢による区別なし）	40歳以上の者と65歳以上の者
介護市場の規模（2019年）	約260億ユーロ（約3.3兆円）	約10.8兆円
介護市場のGDP比（2019年）	3.4%	1.9%
介護人材の有効求人倍率（2020年）	2.69倍	2.69倍
介護人材の平均年収（2020年）	約300万円～約400万円	約240万円～約324万円介護サービスの利用者負担所得に応じて1～3割所得に応じて1～2割在宅介護の割合（2019年）約70%約60%介護施設の種類特別住宅（ケア付き住宅）や高付加価値な施設など多様特別養護老人ホームや有料老人ホームなど一般的外国人労働者の割合（2019年）約10%約1%

まとめ

オランダの介護市場は、高齢化の進行に伴い、在宅介護の推進や介護施設の多様化と高付加価値化などの動向が見られます。また、介護人材の不足と外国人労働者の活用も大きな課題となっています。オランダの介護制度は、社会保険方式と地方自治体の税財源方式の二つの制度が併存しており、全国民が対象となっています。オランダの介護市場は、日本の介護市場と比較して、規模やGDP比が大きく、介護サービスの利用者負担や在宅介護の割合が高く、介護施設の種類や外国人労働者の割合が多様です。