高齢者の高血圧の原因と対策

高齢者の高血圧は、若い頃とは違って血管の老化や病気の合併が原因で起こりやすくなります。高血圧を放置すると、脳卒中や心筋梗塞などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。高齢者の高血圧の特徴や治療法、注意点、対応の仕方について解説します。

高齢者の高血圧の原因

高齢者の高血圧の原因は、主に以下の2つに分けられます。

本態性高血圧：原因が特定できない高血圧で、遺伝や生活習慣などが関係しています。
二次性高血圧：他の病気や薬などが原因で起こる高血圧で、動脈硬化や腎臓病などが多くみられます。

高齢者では、血管の弾力性や柔軟性が低下し、血圧が上昇しやすくなります。また、心臓や腎臓などの臓器の機能も低下し、血圧を調節する能力も低下します。さらに、食塩の摂り過ぎや運動不足、肥満、喫煙、飲酒などの生活習慣も高血圧の原因となります。

高齢者の高血圧の特徴

高齢者の高血圧の特徴は、以下のようにまとめられます。

収縮期血圧（最高血圧）が高くなりやすく、拡張期血圧（最低血圧）との差が大きくなる傾向がある。
血圧の変動が大きく、白衣高血圧や仮面高血圧の頻度が高い。
起立に伴う血圧変化が大きく、起立性高血圧や起立性低血圧が起こりやすい。
食後に血圧が低下する食後低血圧も出現しやすい。

高齢者の高血圧は、一度だけの測定では正確に判断できない場合が多いため、複数回、複数の場所、時間帯で測定することが必要です。また、低血圧によるふらつきや失神などの症状にも注意が必要です。

高齢者の高血圧の治療法

高齢者の高血圧の治療法は、生活習慣の改善と薬物治療の2つに分けられます。

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、高血圧の予防や改善に効果的です。具体的には、以下のようなことを心がけます。

食塩制限：1日の食塩摂取量を6g以下にする。過度の減塩は脱水や低栄養の原因になるので注意する。
運動療法：有酸素運動を中心に、無理のない範囲で行う。激しい運動は怪我や心負荷のリスクがあるので避ける。
減量：肥満の場合は、適正体重を目指す。急激な減量は体調に悪影響があるので、長期的に無理のない範囲で行う。
節酒：多量の飲酒は、高血圧の原因になるので、控える。特にビールや日本酒などの発泡性の飲み物は注意する。
禁煙：喫煙は、心血管疾患の強力な危険因子であるので、禁煙する。

薬物治療

薬物治療は、生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない場合や、合併症のリスクが高い場合に行われます。高齢者の場合、血圧を下げ過ぎると低血圧になってしまうこともあるので、目標値や降圧薬の種類や量は、医師の指示に従って決めます。一般的には、以下のような目標値が推奨されています。

75歳以上の高齢者：140/90mmHg未満
65-74歳の高齢者：130/80mmHg未満

降圧薬には、以下のような種類があります。

カルシウム拮抗剤：血管を拡張して血圧を下げる。高齢者によく用いられる。
アンジオテンシン変換酵素阻害剤（ACE阻害剤）：血管を拡張し、腎臓の働きを改善する。心不全や腎不全のある高齢者に有効。
アンジオテンシンII受容体拮抗剤（ARB）：ACE阻害剤と同様の作用を持つ。ACE阻害剤による副作用（せきなど）が出やすい高齢者に適する。
β遮断薬：心拍数を減らして血圧を下げる。心筋梗塞や狭心症のある高齢者に有効。

利尿薬：尿の量を増やして血圧を下げる。高齢者ではカリウム保持性利尿薬が好ましい。

α遮断薬：血管を拡張して血圧を下げる。起立性低血圧のリスクがあるので注意する。

降圧薬の選択は、合併症や基礎疾患、副作用などを考慮して行われます。また、高齢者では薬の効果や代謝が若年者と異なることもありますので、少量から開始し、効果と副作用をモニタリングしながら用量を調整します。

高齢者の高血圧の注意点

高齢者の高血圧の治療には、以下のような注意点があります。

血圧を下げすぎない：高齢者では、血圧を下げすぎると脳や心臓に十分な血液が届かず、めまいやふらつき、失神などの症状を引き起こすことがあります。また、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高まることが報告されています。そのため、血圧の目標値は個々の状態に応じて設定し、適切な範囲に保つことが重要です。
低血圧に注意する：高齢者では、起立性低血圧や食後低血圧などの低血圧が起こりやすくなります。低血圧は、転倒や骨折などの事故の原因になるだけでなく、脳や心臓に悪影響を及ぼすこともあります。そのため、血圧の測定は、起床時や食後などにも行い、低血圧の有無や程度を把握することが必要です。
薬の相互作用に注意する：高齢者では、高血圧以外にも様々な病気を持っていることが多く、複数の薬を服用していることが多いです。しかし、薬には相互作用があり、効果や副作用が変化することがあります。そのため、服用している薬の種類や量を医師に伝え、必要な場合は調整してもらうことが必要です。

高齢者の高血圧のまとめ

高齢者の高血圧は、若い頃とは違って血管の老化や病気の合併が原因で起こりやすくなります。高血圧を放置すると、脳卒中や心筋梗塞などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。高齢者の高血圧の特徴や治療法、注意点について解説しました。高齢者の高血圧は、一度だけの測定では正確に判断できない場合が多いため、複数回、複数の場所、時間帯で測定することが必要です。また、低血圧によるふらつきや失神などの症状にも注意が必要です。生活習慣の改善と薬物治療の両方を行い、適切な血圧コントロールを目指しましょう。

高齢者の高血圧の治療法や注意点、対応の仕方についての表

項目	内容
治療法	生活習慣の改善と薬物治療の2つに分けられる。生活習慣の改善では、食塩制限、運動療法、減量、節酒、禁煙などを行う。薬物治療では、カルシウム拮抗剤、ACE阻害剤、ARB、β遮断薬、利尿薬、α遮断薬などの降圧薬を用いる。降圧薬の選択や用量は、合併症や基礎疾患、副作用などを考慮して医師によって決められる。
注意点	血圧を下げすぎないこと。高齢者では、血圧を下げすぎると脳や心臓に十分な血液が届かず、めまいやふらつき、失神などの症状を引き起こすことがある。また、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高まることがある。そのため、血圧の目標値は個々の状態に応じて設定し、適切な範囲に保つことが重要である。低血圧に注意すること。高齢者では、起立性低血圧や食後低血圧などの低血圧が起こりやすくなる。低血圧は、転倒や骨折などの事故の原因になるだけでなく、脳や心臓に悪影響を及ぼすこともある。そのため、血圧の測定は、起床時や食後などにも行い、低血圧の有無や程度を把握することが必要である。薬の相互作用に注意すること。高齢者では、高血圧以外にも様々な病気を持っていることが多く、複数の薬を服用していることが多い。しかし、薬には相互作用があり、効果や副作用が変化することがある。そのため、服用している薬の種類や量を医師に伝え、必要な場合は調整してもらうことが必要である。
対応の仕方	血圧の測定を定期的に行うこと。高齢者の高血圧は、一度だけの測定では正確に判断できない場合が多いため、複数回、複数の場所、時間帯で測定することが必要です。また、低血圧によるふらつきや失神などの症状にも注意が必要です。生活習慣の改善と薬物治療の両方を行い、適切な血圧コントロールを目指しましょう。医師の指示に従って降圧薬を服用し、副作用や相互作用に注意しましょう。