介護とは、身体的・精神的な障害や高齢化によって日常生活に困難を抱える人に対して、必要な支援を行うことです。介護は人類の歴史とともに存在してきましたが、近代になってからは社会的な制度として整備されるようになりました。本記事では、介護の歴史と、日本と海外の介護事情について紹介します。
介護の歴史
介護の歴史は、古代から現代まで、時代や地域によってさまざまな変遷をたどってきました。ここでは、大きく分けて4つの時代に分けて、介護の歴史を振り返ってみましょう。
古代～中世
古代から中世にかけては、介護は主に家族や親族、宗教団体などが行っていました。当時は医療技術が未発達で、障害や病気は神の罰や悪魔のせいと考えられていたため、介護者は差別や迫害を受けることもありました。一方で、仏教やキリスト教などの宗教は、障害者や貧困者に対する慈善活動を行っており、病院や施療所などの施設を設立して介護を提供していました。
近世～近代
近世から近代にかけては、産業革命や都市化の進展によって、社会の構造が大きく変化しました。家族や親族の絆が希薄になり、介護を必要とする人が増えました。しかし、国や地方の公的な介護制度はほとんどなく、介護は民間の慈善団体やボランティアに頼っていました。また、精神障害者や身体障害者は、隔離や監禁などの非人道的な扱いを受けることもありました。
近代～現代
近代から現代にかけては、医療技術や福祉技術の発展によって、介護の質や量が向上しました。また、人権や福祉の観念が広まり、障害者や高齢者に対する社会的な配慮や支援が強化されました。さらに、第二次世界大戦後には、高齢化や少子化などの社会問題が顕在化し、介護の需要が急増しました。これに対応して、多くの国では、国や地方が介護保険制度や介護サービスを整備し、介護の公的な責任を負うようになりました。
日本と海外の介護事情
介護の歴史を見てきましたが、現在の日本と海外の介護事情はどのように違うのでしょうか。ここでは、日本と代表的な国の介護事情を比較してみましょう。
日本
日本では、2000年に介護保険制度がスタートしました。介護保険制度は、40歳以上のすべての国民が加入することになっており、介護を必要とする人は、要介護認定を受けて、介護サービスを利用することができます。介護サービスには、在宅介護サービスと施設介護サービスがあり、利用者は自分の希望や状況に応じて選択できます。介護サービスの費用は、国や地方が一部を負担し、利用者は自己負担分を支払います。自己負担分は、所得に応じて決まりますが、最大でサービス費用の10％です。
日本の介護事情の特徴は、以下のようにまとめることができます。
- 介護保険制度がある
- 在宅介護と施設介護の両方が利用できる
- 自己負担分が所得に応じて決まる
- 介護職員の人手不足や処遇改善が課題
アメリカ
アメリカでは、公的な介護保険制度はありません。介護を必要とする人は、自分で民間の介護保険に加入するか、家族や親族に頼るか、慈善団体やボランティアに支援を求めるかのいずれかになります。ただし、低所得者や障害者に対しては、メディケイドという医療保険制度があり、一部の介護サービスを利用することができます。また、65歳以上の高齢者に対しては、メディケアという医療保険制度があり、短期間の在宅介護サービスや施設介護サービスを利用することができます。しかし、これらの制度は、介護サービスの範囲や期間が限られており、十分な介護を受けることができるとは言えません。
アメリカの介護事情の特徴は、以下のようにまとめることができます。
- 公的な介護保険制度がない
- 民間の介護保険や家族・親族の介護が主流
- 低所得者や障害者に対しては医療保険制度がある
- 介護サービスの質や量が不十分
スウェーデン
スウェーデンでは、1970年代から高齢者福祉の充実を図ってきました。スウェーデンの高齢者福祉は、国が基本的な方針を決め、地方自治体が具体的なサービスを提供するという仕組みになっています。介護を必要とする人は、地方自治体に申請して、介護サービスを利用することができます。介護サービスには、在宅介護サービスと施設介護サービスがあり、
利用者は自分の希望や状況に応じて選択できます。介護サービスの費用は、地方自治体が一部を負担し、利用者は自己負担分を支払います。自己負担分は、所得に応じて決まりますが、最大でサービス費用の20％です。
スウェーデンの介護事情の特徴は、以下のようにまとめることができます。
- 国が基本的な方針を決め、地方自治体がサービスを提供する
- 在宅介護と施設介護の両方が利用できる
- 自己負担分が所得に応じて決まる
- 介護職員の教育や資格が充実している
まとめ
本記事では、介護の歴史と、日本と海外の介護事情について紹介しました。介護は人類の歴史とともに存在してきましたが、近代になってからは社会的な制度として整備されるようになりました。現在の日本と海外の介護事情は、それぞれに特徴や課題があります。介護は、個人や家族だけでなく、社会全体の問題です。今後も、介護の質や量を向上させるために、国や地方、民間やボランティアなどが協力して取り組んでいく必要があります。
