除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒という言葉は、微生物を制御する方法を表すものですが、それぞれに違う意味と効果があります。感染症や食中毒の予防対策として重要なこれらの言葉の違いについて、種類や意味や違いについて解説します。
除菌
除菌とは、対象物に付着している微生物を取り除いて、その数を減らすことです。除菌には、高水準除菌、中水準除菌、低水準除菌の3つの水準があります。水準が高いほど、取り除ける微生物の種類や数が多くなります。除菌は、人体や器具、環境などに対して行うことができますが、除菌剤の種類や使用方法によって、適用範囲や効果が異なります。除菌剤には、アルコール系、次亜塩素酸系、ポビドンヨード系、グルタラール系などがあります。
抗菌
抗菌とは、対象物に付着する菌の増殖を抑えることです。直接的に菌を殺したり、取り除いたりするのではなく、菌が住みにくい環境をつくることを表しています。なお、経済産業省の定義では、ウイルスはその対象に入っていません。ハンカチや靴下、パソコン用品、おもちゃ、ぬいぐるみ、カバン、スリッパ、便座など、抗菌加工の施されている製品は色々あり、いずれも菌が繁殖しにくい特徴があります。
殺菌
殺菌とは、対象物に付着する菌を殺す行為であり、殺す対象や程度を含まない言葉です。殺菌は、除菌や滅菌の一部を表すもので、殺菌だけでは感染予防の意味合いはありません。殺菌には、熱や化学物質、放射線などを用いる方法があります。殺菌は、薬機法によって、「殺菌」という表示ができる商品は、医薬品や医薬部外品のみに限られています。消毒剤や薬用石けんなどでは、しばしば見かけるのではないでしょうか。
滅菌
滅菌とは、対象物に付着する菌やウイルスといった微生物の数を、限りなくゼロに近づけることです。滅菌前の状態から、微生物の数を100万分の1以下に減らすことを指します。定義も明確であり、今回取り上げた4つのなかではもっとも強力な作用です。ケガの手当てで滅菌ガーゼを使用する方がいるかもしれません。このように、基本的には医療になじみの深い言葉。たとえば手術用具や注射器などには、かならず滅菌が施されています。
消毒
消毒とは、対象物に付着している病原性のある微生物を、害のない程度まで減らしたり、感染力を失わせて無毒化したりすることです。消毒には、高水準消毒、中水準消毒、低水準消毒の3つの水準があります。水準が高いほど、無毒化できる微生物の種類や数が多くなります。消毒は、人体や器具、環境などに対して行うことができますが、消毒剤の種類や使用方法によって、適用範囲や効果が異なります。消毒剤には、アルコール系、次亜塩素酸系、ポビドンヨード系、グルタラール系などがあります。
まとめ
除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒という言葉は、微生物を制御する方法を表すものですが、それぞれに違う意味と効果があります。除菌と殺菌は、微生物の数を減らすことを目的としていますが、殺菌は医薬品や医薬部外品にしか表示できません。抗菌は、微生物の増殖を抑えることを目的としていますが、ウイルスは対象に含まれません。滅菌は、微生物の数を限りなくゼロに近づけることを目的としていますが、医療に関係するものにしか表示できません。消毒は、病原性のある微生物を無毒化することを目的としていますが、消毒剤の種類や使用方法によって効果が異なります。これらの言葉の違いを理解して、適切に使い分けることが大切です。
言葉 | 意味 | 効果 | 表示できる製品 | 例 |
---|---|---|---|---|
除菌 | 微生物の数を減らす | 高水準・中水準・低水準 | 除菌剤など | 除菌シートや除菌スプレーなど |
抗菌 | 微生物の増殖を抑える | ウイルスは対象外 | 抗菌加工製品など | 抗菌ハンカチや抗菌靴下など |
殺菌 | 菌を殺す | 感染予防の意味合いなし | 医薬品や医薬部外品など | 殺菌剤や薬用石けんなど |
滅菌 | 微生物の数を限りなくゼロに近づける | もっとも強力な作用 | 医療に関係するものなど | 滅菌ガーゼや滅菌注射器など |
消毒 | 病原性のある微生物を無毒化する | 高水準・中水準・低水準 | 消毒剤など | 消毒薬や消毒用アルコールなど |