高齢者の骨折・転倒について知っておきたいこと
高齢者の骨折・転倒は、介護が必要になる主な原因の一つです。骨折や転倒は、骨の強度の低下や筋力の衰え、住環境の問題などによって起こります。この記事では、高齢者に多い骨折の種類と原因、その予防と対策について解説します。また、骨折のリハビリテーションや介護の方法についても紹介します。
高齢者に多い骨折の種類と原因
高齢者に多い骨折の種類は、以下の4つです。
- 大腿骨近位部骨折(太ももの付け根、股関節)
- 脊椎圧迫骨折(背骨)
- 上腕骨近位部骨折(腕の付け根)
- 橈骨遠位端骨折(手首)
これらの骨折は、転倒によって起こることが多く、転倒の原因には、内的因子と外的因子の2つがあります。
内的因子
内的因子とは、その人個人の問題で、病気や加齢、運動不足による身体機能の低下(筋力、バランス、視力など)、認知機能の低下、薬の影響、栄養不良などです。高齢になることで、若いときと比べて、筋肉量の減少や筋力低下がおきやすくなります。また、脳血管障害による麻痺やパーキンソン病などの病気によって、歩行時に歩きにくくなったり、躓きやすくなるため、転倒の危険性が増えます。薬によっては、副作用でふらつきやすさが出現することで、転倒につながる恐れもあります。
外的因子
外的因子とは、外部の環境の問題であり、住環境などのことをいいます。自宅内の段差が多く、高さが高いことや床が滑りやすい、物が多く躓きやすい環境は転倒を発生させる原因となってしまいます。転倒は、この内的因子と外的因子が複雑にからみ合うことで、生じやすくなります。
高齢者の骨折の予防と対策
高齢者の骨折の予防と対策には、転倒の予防と骨粗鬆症の予防が重要となってきます。転倒の予防には、内的因子と外的因子の両方に対応する必要があります。骨粗鬆症の予防には、適度な運動や栄養の摂取、日光浴などが有効です。また、骨粗鬆症の治療には、医師の指示に従って薬を服用することが必要です。
転倒の予防
転倒の予防には、以下のようなことができます。
- 運動などによって、筋力やバランスを維持する
- 視力や聴力の検査を受けて、必要ならば補聴器や眼鏡を使用する
- 薬の副作用に注意して、ふらつきやすいときは安静にする
- 栄養バランスの良い食事を摂る
- 住環境を見直して、段差や滑りやすい床、躓きやすい物を減らす
- 足元灯や手すりを設置する
- 滑りにくい靴やスリッパを履く
- 重い荷物を持たないようにする
- 焦らず、余裕を持って行動する
骨粗鬆症の予防と治療
骨粗鬆症の予防と治療には、以下のようなことができます。
- 定期的な検診を受けて、骨密度を測定する
- 医師の指示に従って、骨粗鬆症の薬を服用する
- 適度な運動をして、骨に負荷をかける
- カルシウムや蛋白質を含む食事を摂る
- ビタミンDの生成のために、日光浴をする
高齢者の骨折のリハビリテーションと介護
高齢者の骨折は、単に骨を治すだけではなく、骨折によって失われた日常生活の機能を回復することが重要です。そのためには、リハビリテーションや介護が必要になります。リハビリテーションや介護の目的は、骨折の部位や程度によって異なりますが、一般的には以下のようなことが挙げられます。
- 骨折部位の痛みや腫れを抑える
- 骨折部位の可動域や筋力を回復する
- 骨折部位の機能を回復させる
- 骨折以外の部位の機能を維持する
- 日常生活動作や社会参加を可能にする
リハビリの内容は、骨折の部位や程度、年齢、生活環境などによって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。
- 骨折部位の可動域訓練:骨折部位の関節を動かして、柔軟性や可動域を向上させます。自分で動かす場合と、理学療法士が動かす場合があります。
- 骨折部位の筋力訓練:骨折部位の筋肉を強化するために、重りやバンドなどを使って抵抗をかけて動かします。骨折部位の安定性や耐久性を高めます。
- 骨折部位の機能訓練:骨折部位を使って、日常生活に必要な動作を練習します。例えば、手首の骨折の場合は、ボタンを留めたり、ファスナーを上げ下げしたり、箸やスプーンを使ったりする動作を行います。
- 骨折以外の部位の運動:骨折部位以外の筋力や可動域、バランスなどを維持するために、全身の運動を行います。例えば、座位や立位でのストレッチや筋力トレーニング、歩行や階段昇降などの動作を行います。
- 日常生活動作の訓練:骨折部位の機能が回復しても、日常生活に戻るには、トイレや入浴、着替え、食事などの基本的な動作を行えるようになる必要があります。そのために、実際の環境や道具を使って、日常生活動作の訓練を行います。
- 社会参加の訓練:日常生活に戻るだけでなく、社会生活にも参加できるようになることが目標です。そのために、趣味やレクリエーション、職業などの活動に関する訓練を行います。例えば、読書や手芸、ゲームなどの趣味活動や、買い物や交通機関の利用などの外出活動を行います。
リハビリの効果を高めるためには、理学療法士や作業療法士と協力して、目標を設定し、計画的に進めることが大切です。また、リハビリの時間だけでなく、日常生活の中でも、骨折部位や全身の運動を行うことが重要です。リハビリは、自分の身体と向き合うことで、自分の可能性を広げることができます。
高齢者の骨折の注意点
高齢者の骨折は、若い人と比べて、回復に時間がかかったり、合併症が起こりやすかったりすることがあります。そのため、以下のような注意点を押さえておくことが必要です。
- 骨折部位の痛みや腫れに注意する:骨折部位は、痛みや腫れが起こりやすく、感染や血栓などの合併症のリスクがあります。そのため、痛みや腫れがひどくなったり、発熱や異常な色や臭いがあったりした場合は、医師に相談することが必要です。
- 骨折以外の部位の機能低下に注意する:骨折部位の治療やリハビリに集中していると、骨折以外の部位の機能が低下してしまうことがあります。特に、長期間安静にしていると、筋力や可動域、バランスなどが低下し、肺炎や褥瘡などの合併症が起こりやすくなります。そのため、骨折以外の部位も適度に動かすことが大切です。
- 骨折の再発に注意する:骨折をしたことで、骨の強度が低下したり、骨粗鬆症が進行したりすることがあります。そのため、同じ部位や他の部位に再び骨折する可能性が高くなります。そのため、骨折の予防策を継続的に行うことが必要です。
高齢者の骨折のまとめ
高齢者の骨折は、介護が必要になる主な原因の一つです。骨折や転倒は、骨の強度の低下や筋力の衰え、住環境の問題などによって起こります。この記事では、高齢者に多い骨折の種類と原因、その予防と対策、リハビリテーションと注意点について解説しました。骨折は、早期に発見し、適切な治療とリハビリを行うことで、回復の可能性が高くなります。また、骨折の予防には、適度な運動や栄養の摂取、日光浴などが有効です。高齢者の骨折は、自分だけでなく、家族や周囲の人の協力が必要なことも多いです。骨折をした高齢者の方やそのご家族の方は、医師や理学療法士、作業療法士などの専門家に相談して、最善の治療とリハビリを行ってください。